夕方の散歩の道で、トンボが二匹、私の前を横切って行きました。『赤とんぼかな?』と思いましたが、日本で見慣れた色よりも、少し薄かったのですが、メスだったかも知れません。夕方の風を受けて、スイスイと飛んでいたのです。やはり秋なのでしょうね。トンボを目にすると思い出されるのは、作詞が三木露風、作曲が山田耕筰の「赤とんぼ」です。
1 夕焼小焼の赤とんぼ
負われて見たのは いつの日か
2 山の畑の桑の実を
小かごに摘んだは まぼろしか
3 十五でねえやは嫁にゆき
お里のたよりも 絶えはてた
4 夕焼小焼の赤とんぼ
とまっているよ 竿の先
工業化や都市化が進んで、里山や野原や小川が少なくなったり、防虫や除草のために農薬が多く使われたからでしょうか、虫や鳥や野花が生息できなくなって来ているのでしょうか、子どものころに、野原や田んぼの上を、無数に飛んでいた赤とんぼを、最近では見かけなくなってしまいました。こちらでも同じなのかも知れません。
<トンボとり>、<トンボつり>などと言ったでしょうか、棒の先に止まっているトンボの目の前で、人差し指を蚊取り線香のようにくるくる回して、気絶させて採る方法もあったのですが、採れたためしがありませんでした。この歌の二番にある、「桑の実」のことを、小学校時代を過ごした都下の街では、<ドドメ>と呼んでいました。好く熟した実は、甘くてとても美味しかったのです。
まだ農家は、養蚕(ようさん)をしていましたから、桑畑が広がっていて、ある木には、たくさんの実をつけていたのです。桑の木の前に座り込んで、口いっぱいに放り込んで食べたものです。こちらでも、一斗缶に入れて、道端で売っているのですが、夏前に出回っていたようです。<赤とんぼ>、<桑の実>は、懐かしい子どもの頃の風物詩であります。
(写真は、”実業之日本社”による復刻版「赤とんぼ」です)