左の頬

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『隣人と争っても、他人の秘密を漏らしてはならない。』と言う格言があります。その争いを優位にするために、個人的に知り得た争う相手の秘密を、公に言いふらすことは、人としてすることではないからです。争いは、口喧嘩よりも、<拳(こぶし)>で決着をつけるのが好いのではないでしょうか。どちらかが、『参った!』と言うか、誰かが止めに入るまでです。罵り合いながら、とんでもないことまで言い合うよりは、スッキリしていて好いのです。もちろん素手です。

こんな提言をすると、<暴力じじい>と言われそうですね。天津に住んでいた時、「菜市場(中国版の庶民のマーケット)」の出口で、若いご婦人が二人、コンクリートのタタキの上で、上になったり下になったりで、取っ組み合いの喧嘩をしてるのを、二度ほど見ました。男のように激しかったので、中国女性には驚かされたのです。仲裁が入って幕になりましたが、見ていて気持ちの好い物ではありませんでした。江戸の昔は、『喧嘩は江戸の華!』と言われていたそうですが、中国の街ではどうなのでしょうか。

やはり無言の内の決まりがあって、棒や道具をつかったりしないのです。実力と肝っ玉の勝負です。犬も出会いばしらに、火花を散らし始めることがありす。しかし、血統の好い犬は、堂々としていて威容があり、始まる前に決着が着いて、負け犬は、睨まれただけで、戦意喪失、尻尾を巻いて逃げてしまうのです。高知では「闘犬」、スペインなどでは「闘牛」、ある所では「闘鶏」が行われています。人間の賭け事のためにです。よろず世間は、争いや喧嘩が絶えません。

ここで前言を訂正しましょう。喧嘩はいけません。避けるべきです。そして先に謝ってしまうのが好いのです。強くても、何の役にも立たないからです。<男の面子>なんて、どうでも好いのです。『負けて泣いて帰って来たら家に入れない!』と言われて育ったので、どうも、そんな考えから抜け出せないのです。ごめんなさい。『右の頬を打たれたら、左の頬を出しなさい!』と言われていますが、これが到達したい 私の一つのゴールなのです。

(イラストは、”子供と動物のイラスト屋さん”から「けんか」です)