東日本大震災が起こった時、海外から寄せられた<激励のことば>が多くありました。その一つが、『がんばれ!ニッポン!』でした。そして日本人自らも、そう<檄(げき)>を飛ばしていたのです。地震と津波に見舞われた福島、宮城、岩手県の被災者のみなさんへの見舞いの言葉でもありました。厳しい現実に挫(くじ)けないで、立ち上が理、前に向かって進む勇気を奮い立たせようとしてくれたのです。
被災者のみなさんも,想像を絶するような現実の前に、『頑張らなくては!』と心に決めておられました。今年も日本から、台風の襲来、大雨、地滑り、孤立などの被害の様子を聞いています。古来、日本では、この自然災害との対決が繰り返されて来て、頑張った甲斐があって、それだけ多くのことを学び取ったのではないでしょうか。
そう言った戦いの中で、互いに、『頑張って!』と声を掛け合って生きて来た民族が、私たちだったに違いありません。ですから、ことあるごとに、このことばが繰り返され、日常会話の中で、頻繁に口にして来ております。とくに勉強やスポーツなどで、応援者がよく語って来たことばです。
別れの挨拶の『さようなら!』の代わりに、また手紙の文末などにも、『ガンバッテ!』が使われていました。このことばは、<頑張り精神>と言っても好いのかも知れません。狭い国土と貧しさを克服するために、頑張って来たことで、極めて高度な技術を身につけて来たのでしょう。<頑張り精神>で鼓舞し合いながら出来上がったのが、日本と日本人なのかも知れません。
ある方が、『頑張らなくていい。そのまんまの自分で、肩に力を入れないで生きた方がいいんだ!』と言ってくれたことがありました。そうする必要を見て取ったからなのでしょう。頑張りすぎて疲れ果ててしまうよりは、ちょっと怠けてみることの大切を学んだのです。戦後の教育の中に、<叱咤激励>があったでしょうか。廃墟の中から国を再建するために、頑張らなくてはならない父母の世代が、この<頑張り精神>を子どもたちにも求めたのです。
さらに国際競争や紛争が激しくなって行くと、また再び、この精神が求められるのかも知れません。自然体で生きた方が、かえって効率が上がり、新しいアイデアが湧き上がって来るに違いありません。生まれながらに、『頑張れ!』と言われて来た私に、『もう頑張らなくていい!』と言うことばは、<解放宣言>のように聞こえてまいります。
これまで、『頑張って!』と言った多くの人にも、『もう頑張らなくてもいいよ!』と言い直したい思いでいる、八月の私です。
(写真は、朝日新聞社より、大船渡市の被災の様子です)