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日本の地震学会が、火山大国で、断層に囲まれた日本列島には、大きな地震が起こる可能性の高さを指摘してから、随分と時間が経ちます。『いつでも起こりうる!』ほどなのだそうです。
1923年9月1日に起こった「関東大震災」を、その時、13歳だった私の父は、神奈川県の横須賀に住んでいて、その大きな揺れを経験し、被害状況も目撃しています。また6歳だった母も、地震の起きた南関東から遠く離れた、山陰の出雲に住んでいて、『その揺れを覚えている!』と言っていました。
子どもの頃、地震が起こると、父は大声で、『玄関と戸を開けろ!』と叫んでいたのを覚えています。子どもの頃の想像を絶した恐怖体験が、そうさせたのでしょうか、私は、急いてガラス戸を開けたのです。ですから今でも、地震が起きると、玄関に飛んでいき、鉄製の扉を開けるようにしています。
その関東大震災が起きた直後に、「デマ(流言蜚語/るげんひご)」が拡散したと伝えられています。『朝鮮人や中国人が井戸に毒を投げ込んだ!』と、全く根拠のない噂を立てて、地震ばかりではなく、大騒動が起きたのです。その騒動で、虐殺が起こって、多くの犠牲者を生んだのです。
根拠のない情報が、人を狂気に連れていくことの怖さが、大問題とされたのです。社会がパニックに陥った時に、人が群集心理に動かされ、小さなデマが、憎悪を産んでしまうということがあったとしたら、今でも、そう言ったことが起こりうるのです。
『実に、あなたがたの手は血で汚れ、指は咎で汚れ、あなたがたのくちびるは偽りを語り、舌は不正をつぶやく。 正しい訴えをする者はなく、真実をもって弁護する者もなく、むなしいことにたより、うそを言い、害毒をはらみ、悪意を産む。(新改訳聖書 イザヤ59章3-4節)』
情報の溢れかえる現代、デマ情報が溢れています。人の耳は、容易に、その偽情報を聞いて、信じ込んでしまうのです。不安が大きくなればなるほど、デマを拡散する人が増え、騒乱を起こすために、故意にそのデマを拡散させる者たちが起きてきます。
作為的にデマを拡散することは、人類史上、よく起こってきています。ユダヤ人への憎しみが、誹謗になり、あのホロコーストをもたらせ、夥しい数のユダヤ人が、あのナチスドイツ、ヒトラーによって虐殺されています。ユダヤ人への憎悪を増し加えて、ドイツ国民の支持を得たのです。
第一次大戦でのドイツに敗北、莫大な金額の賠償金の負担、ドイツ人社会を圧迫した背景で、その元凶こそがユダヤ人だとし、彼らへの憎悪が増幅されて行き、それが大虐殺に至ったのです。歴史を見ますと、人の心は、容易にデマに冒されるの危険性に満ちていると言うことです。
何気ない小さな嘘が、瞬く間に拡散し、拡大し、火のように燃え始め、燃え広がって大火事になるように、噂は、人の間、群衆の間を駆け巡って行きます。
現代は、偽情報が、簡単に拡散していく危険性を帯びています。冷静さの中にいる間はいいのですが、パニックになってしまう時には、常軌を逸してしまって、嘘を簡単に信じてしまう心理状況に、簡単に陥ってしまいます。人の悪意や憎悪は、ものすごい勢いで広がり、影響し、汚染してしまいます。
こんなに小さなスマホは、情報発信元に容易に繋がり、膨大な情報が流れ出てきます。今や、このツールが、デマの道具に、手段に、回路になります。人を嫌わせたり、憎ませたり、死なせたり、殺させたりする道具になる怖さを感じて、心が震えるほどです。心って、それほど欺瞞に満ちていて、嘘に支配されやすいのに、気付き、護る必要があります。
悲しかったのは、華南の街に住んでいた時に、郊外に大きなバスターミナルがあって、その地域で、あの日華事変の折の悲劇を聞いたことです。侵攻してきた日本軍が、井戸に毒を投げ込んで、多くの犠牲者が出たという話でした。民間人に対する罪は大きいのです。どう弁明もできずに、私ができたのは、『对不起duibuqi!』とのお詫びだけでした。その一件はデマではなく、真実だったのです。そんな過去のある中での13年間でした。
もう一言申し上げたいのです。
『そうでないと、あなたがたの心は弱まり、この国に聞こえるうわさを恐れよう。うわさは今年も来、その後の年にも、うわさは来る。この国には暴虐があり、支配者はほかの支配者を攻める。(エレミヤ51章46節)』
エレミヤは、預言者として、将来に関して多くのことを書き記しました。その一つは、「うわさ」に関してです。まるで戦争が起きるように、噂が溢れる時代の到来の預言なのです。『あの国で、あの人が、こんなことを言っている!』と言う、「噂」が増え広がる時代が到来することの預言でしょうか。人心を不安にさせる噂に弄(もてあそ)ばれてしまうのです。注意、注意!
(ウイキペディアによるミケランジェロの描いた「エレミヤ」、「初代iPhone」です)
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