ダグ・ハマーショルドは「道しるべ」の中で、謙虚さについて自分を戒める数多くの記述を残していますが、彼の名言を13の特徴にまとめてみたいと思います。
文章は本書そのままですが、漢字や送り仮名を読みやすくしています。例えば、較べる→比べる 情ない→情けない といった具合です。
耳を傾ける
おまえがけっして耳を傾けたがらないなら、聞こえるという能力を、おまえはどうして保持してゆくことができようか。
神がひまをかけておまえにかかずらうべきだ、ということがおまえには当然のように思われるらしいが、そのくせおまえのほうでは神にかかずらうひまがないとは!(p28)
自分の話をだれかに聞いてもらいたいなら、まず自分が耳を傾ける必要があります。
人生を見限らない
人生とはそんなにも情けないものなのか。むしろ、おまえの手のほうが小さすぎ、おまえの目のほうが濁っているのではないか。おまえのほうこそ、成長しなければならぬ。(p59)
辛い状況に直面しても、謙虚さがあれば、決してあきらめません。問題の原因を自分の外ばかりに求めず、自分の内なる問題を正して、成長しようとすることがうかがえます。
今あるものに満足する
彼は幼い娘を連れてやってきた。その子はいちばん上等の晴れ着を着ていた。…だが、…あれは前には別の幼い娘のよそ行きの外套だったのだ。
…しかしその子は満足していた。…それというのも、…もうある種の謙遜を知っていたからである。…おまえはまだこれからその謙遜を理解せねばならぬ。それは、決してひき比べることをせず、今あるものを退けて、“別のもの”や“もっと多くのもの”を求めようとすることの決してない謙遜である。(p73)
必要以上のものを求めたり、不平を言ったりせず、境遇に満足することも、謙遜さの一面であることがわかります。
賞賛を求めない
「我が心身をすり減らす」―自分の仕事をしながら、しかもほかの人たちのために。―それはそれでよい! しかし、そうしてよいのは、自分の姿をあたりに見せつける(おそらくは、他人の賞賛を得たいとさえ願いつつ)ためでない場合に限ってのことである。(p88)
彼は新しい道を切り開いた―それができたのは、他人が後からついてくるだろうかとか、せめて自分を理解してくれるだろうかとさえ自問することなく、ゆくべき道を進みゆく勇気が彼にあったればこそである。(p109)
何をしても感心してくれない、おまえに対する批評家たちに対して、感謝するがよい(。p159)
周りの人の称賛を求めず、純粋な動機で努力することも謙虚さの特徴だとハマーショルドは述べています。
あらゆる人から学ぶ
「あいつが俺にものを教えてくれるんだって?」―いいではないか。おまえに何かしら教えることができないような者は、誰ひとりとしていないのである。万人を通じて語りたもう神にとっては、おまえはいつまでも幼稚園の最低学級の子どもなのである。(p103)
だれの意見も頭ごなしに拒んだりせず、何かを学び取ろうと耳を傾けることも大切です。
権威を振りかざさない
おまえの職務は、支配する権利をおまえに与えてなどはいない。ただ、他人が屈辱感なしにおまえの命令を聞き入れることができるよう、自分の生き方を正してゆく義務をおまえに課するに過ぎぬ。(p105)
謙虚な人は、他人を正すためではなく、自分を正すために権力を用います。
自己吟味する
賛辞を得たい―あるいは、裁きたい―と思うときには、あの鏡に映ったおまえの姿を見るがよい。絶望に陥らずにそうするがよい。(p108)
だれかから称賛されたい、だれかを批判したいと思う場合は、自分を内省し、そんな資格が自分にあるだろうか、と考えるべきです。
できることをする
できることをせよ―そうすれば任務が手に余ることもなく、軽やかに片づけてゆくことができよう。
その軽やかさに力を得て、おそらくは次にやって来るかもしれぬ、より厳しい試練に向かって、希望を持って向かってゆくことができよう。(p121)
謙虚であれば、どんな困難な状況でも自分のできることを分析し、常にベストを尽くします。
慢心しない
さらに前へ! 山頂寸前のあと何歩かを登りつめるにあたっての注意こそ、それまでのすべてに価値があったかどうかを左右するのである。(p142)
謙虚な人は自分の能力を過信せず、注意深く事を進めます。
ためらわず与える
感謝し、そして用意を整えよ。おまえはなにもしないのにすべてを得たのである。求められたら、ためらうことなくおまえの有するすべてを捧げよ。それはつまるところ、全体と比べたら何物でもないのである。(p143)
感謝の気持ちを忘れず、出し惜しみすることなく能力や資力を活用します。
今を生きる
振り返るな。また未来を夢見るな。そんなことをしても、過去を返してはもらえないし、ほかの幸せな夢想をも満たしてはもらえないのだから。おまえの義務、おまえの褒賞―おまえの運命―はいま、ここにあるのだ。(p155)
今の状況が良くないと、つい昔は良かったと過去を振り返ったり、未来を夢想したりしがちです。しかし謙遜さがあれば、独りよがりな態度を避け、現実から目を背けたりせず、今できることに集中します。
比べない
謙虚とは、自賛の反対であるとともに、卑下の反対でもある。謙虚とは自己を他と比較せぬということに存する。自己は一個の実在であるがゆえに泰然自若として、他の何物ないしは何者よりも、優れてもおらず、劣ってもおらず、大きくもなく、小さくもないのである。(p168)
謙虚な人は、自分をだれか、あるいは何かと比較しません。自分を過大評価してだれかを見下げることも、自分を過小評価して価値がないと考えることもありません。
謙遜になりきれないことを知っている
これらの覚え書き?―これらはおまえにとって…断じて見失ってはならぬ定点にまで到着してから立てはじめた道しるべなのである。そして、いまもそのことに変わりはない。
しかし…いまでは、いつかは読者ができるかもしれぬことを、おまえは念頭に置いている。おそらくし、読者をほしがってさえいる!
…だれかほかの人にとっても意味があるかもしれない。さよう―ただし、それはただ、おまえが書きつづる言葉に、虚栄心や自己満足をたち超えた誠実さがこもっている場合に限られる。(p142)
自分は謙虚であると主張するなら、実際には、謙虚さを誇っていることになります。本当に謙虚であれば、自分が謙虚になりきれないことを自覚し、謙虚であろうとする努力を怠りません。
[引用先 HP「いつも空が見えるから」]
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これは、元国際連合の事務局長をされていた、ダグ・ハマーショルド氏の「日記」を、友人が編集して著した「道しるべ」から、このHPの著者、"SUSUMU AKASHI"氏が作成したものです。
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ダグ・ハマーショルドの言葉にこうやって出会えてよかったです。ありがとうございます。