小さな出来事

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昨夕、家内と路線バスに乗って出かけました。その訪ねた家で夕食をご馳走になって、10時過ぎまで話をして過ごしました。遅くなってしまい、帰路についたのですが、もうバスの運行時間が終わってしまっていました。それでタクシーに乗って帰って来たのです。アパートの前の果物屋さんに明かりがついていましたので、みかんと葡萄を買って道路を渡ったのです。私たちの後ろから一人のご婦人が歩いて来られ、何か話しかけてきました。小声だったので私は聞き取れなかったのですが、「いい夫婦ですね!」と言っていたそうです。こちらの方は、そう言った言葉を、見ず知らずの私たちにも、気軽にかけてこられるのです。

久し振りに寄る店で、懐かしそうに店主が話しかけてきます。「どうして知ってるのですか?」と聞くと、「一年前に買い物に来たじゃあないですか!」と答えます。私たちのことを覚えていてくれたのです。これは時々あることです。「意外と見られているんだ?」と思い、言動に気を付けないといけないと感じています。群衆の中に紛れ込んでいるように感じても、見ている人がいるわけです。最近では、すっかり中国人になったように感じるのです。顔の色も表情も仕草も、少しも変わらないのですから。それでも、ちょっとした違いがあり、みなさんから少しばかり浮いて見られているのかも知れません。

日本男児の私は、妻でありながら、なかなか腕を組んだり、手をつないで歩くのに躊躇してしまうのです。アメリカ人のようにできたら好いのですが。人の目を気にするからでしょうか。でもこちらに来て、だんだんと年を重ねて、足元がおぼつかなくなってきたこともありますし、夜道は日本のように明るくないし、段差もありますので、最近では、腕を組んでくる家内を受け止めて歩いているのです。そう言った様子を見て、好ましく感じられたのでしょうか、そのご婦人が、そう語り掛けてきたわけです。仲睦まじい様子は、好いことなのですね。「日本人の老夫婦が助け合って、異国で生きているんだ!」と思ってくれるのは、対日感情のなかなか好転しない中での少しばかりの「一歩前進」になるのでしょうか。多くの人たちが、いまだに「日本鬼子」と思っておられる昨晩の巷での小さな出来事です。

(写真は、「夕日」です)