小学校の時に、「賞状」をもらったことがあります。街の文化祭に、絵と工作とが出展された時でした。優等賞も皆勤賞もらったことはありませんし、これからももらうなどありませんから、生涯ただ二枚の賞状です。「銅賞」でしたから、第三位で佳作の一つ上です。そんな賞状も、なんども引越しをしているうちになくなってしまいました。
そこに「右者」とありました。これを、多くの人は、「みぎのもの」と読むのです。昔の校長や教育長は、「みぎは」と、正しく読んだのですが、「誤読」されやすい漢字の一例です。国語学者の大野晋が、国語力や漢字力の低下について、ご自分の経験を通して、「私の師である橋本進吉教授に比べると、私の・・・」、「橋本先生もその師に比べて・・・」と述べています。年々低下傾向にあることになります。作家で戯曲家の井上ひさしが、「難読漢字」に触れた記事を書いています。「読めない漢字が私にも多くあるのです!」と謙遜に言っています。そうしますと、幼稚園の頃から漢字だけで養育を受けている中国のみなさんの「漢字能力」が、いかに高いかということに感心してしまうのです。
「誤用」も多くあるそうです。「辞書の日」である10月16日(米国の辞書編修者、ノア・ウェブスターの誕生日/1758年)を記念して、「間違った意味で使われる言葉ランキング」と「言い間違いされる言葉ランキング」を発表しています(ウエブスターは、 英語辞書で最も有名で高く評価されている辞書の編集者で,「アメリカの学問と教育の父」と言われています)。例えば、
「ハッカー」➡「インターネットなどの知識が豊富で詳しい人」という意味です。
「確信犯」➡「信念に基づいて『正しいことだ』と思い込んでする犯罪」のことです。
「破天荒」➡「だれもなしえなかったをすること」のことです。
「姑息」➡「一時しのぎ」のことです。
「失笑する」➡「思わず笑い出す」ことです。
などがあります。
私の母が勘違いして、訪ねてきたおじさんと話をしていたのを、父が聞いていて、よく、その話の間違いの言葉、「スクラム、スクラム!」と言っては母を困らせていたことがありました。「そうですね!」と相槌をうっていたおじさんも、よく分かっていなかったようです。「また、そんなことを、お父さんは言って!」と、母がやり返していました。いたずらな父でした。その父が、第一版の「広辞苑」を買ってくれました。この辞書を引いては、言葉を覚えたのです。
(写真は、大野晋の編纂した角川書店刊の「類語新辞典」です)