赤バット

20131109-165737.jpg

私たちの子どもの頃、大人にも子どもにも「夢」を与えてくれたのが、読売巨人軍の一塁手、背番号「16」をつけた「川上哲治」でした。この憧れの名ヒッターが、この10月28日に亡くなられたと、ニュースが報じていました。

父が、戦前からの巨人軍贔屓(びいき)でしたので、兄たちも同じく、このチームのフアンでした。まだ後楽園で試合が行われていた頃に、水道橋の駅から降りて、兄たちに連れて行かれて観戦したことがありました。今の様にテレビが普及していない時代でしたから、押すな押すなの超満員だったのです。その人の波に圧倒されてしまいました。

あの時代、「紅梅」とか「カバヤ」とか言う菓子の会社があって、箱入りの飴を製造していました。駄菓子屋の店頭に並べられてあって、小遣いをもらっては、買いに走って行ったものです。「森永」とか「明治」と比べると1ランク下のメーカーで、美味しくなかったのですが、その箱の中に、相撲の力士や野球選手の「カード」が入っていて、そのカード欲しさに買っていました。その中で、一番人気は、「川上哲治」だったのです。このカードを、「飛ばしっこ」や、手の平で「起こしっこ」をして、ゲームをしました。空き缶の中に、ずいぶんあったのですが、どこへ消えてしまったのでしょうか。

川上哲治は、「赤バット」を使っていた時期があったので有名でした。私はしなかったのですが、すぐ上の兄は、甲子園を目指した野球小僧でした。兄の憧れも、巨人軍の選手で、やはり川上だったのだろうと思います。そんなことを思っている私も、時々、小走りをするのですが、やはり走るのがしんどくなっています。キャッチボールを教えてくれたり、グローブやバットを買ってくれた父も逝き、父の贔屓の巨人軍の名選手・川上哲治も逝きました。父が亡くなった同じ病院で、川上哲治も召されたのかも知れません。一日一日、一人一人、やはり「昭和」が遠のいていくのを感じております。やはり寂しさを禁じ得ません。

(航空写真は、川上哲治が活躍した頃の「後楽園球場」です)

秋深し

20131031-104723.jpg

先日、いつものバス停で降りて、大通りに面した門から、アパート群の敷地の中に入って、我が家に向かって歩いていました。建物の角を曲がったところで、聞き覚えのある音楽が聞こえてきたのです。「ちいさい秋見付けた・・・」の曲ではありませんか。まさか、日本の童謡が聞こえるとは思いもよりませんから、驚いたり、嬉しかったりだったのです。立ち続けの授業を終えての帰りでしたから、日本の歌にねぎらわれたようでした。木々は緑の葉をつけ、日差しも暑さを感じ、時々汗ばむような、こちらの秋なのです。それでも吹く風に、なんとなく秋が感じられ、朝晩は、「冷やっ」とした感覚はあります。その曲を聞いた瞬間、日本にいるような錯覚に襲われてしまいました。こう言った歌を知っておられる方がいて、時季に叶ってネットから聞いているのでしょうか。この辺には日本人がいるはずがないのです。

今、PCに向かっているのですが、台所の開けた窓から、正門の隣にある「幼稚園」から音楽が聞こえてきます。この連続する音楽で、園児が踊っているのです。その定番が、「ちびまる子ちゃん」のテーマミュージックなのです。上海万博でも、谷村新司が、「昴(すばる)」を堂々と歌ってもいました。もう少しさかのぼりますと、「北国に春」が、この国で大流行していて、多くの人が、今でも口ずさんでおいでです。「好いもの」には、国境がないのでしょうか。過去のいきさつを度返しして、受け容れる度量の大きさや広さを、こちらのみなさんに感じるのです。

私には、「中国の歌」が、日本で歌われていた記憶がないのです。「蘇州夜曲」や「上海ブルース」などは知っていますが、これらは「曲名」だけで、日本人が作った歌です。それで、私は、この街のみなさんが、自転車をこぎながらでも、店の前にスピーカーを置いて流していても、よく歌っている歌を覚えたのです。大陸の歌ではなく、台湾の歌手が歌って、以前大流行した歌なのだそうです。一緒に教え子と歌ったこともあります。「愛拚才会赢(aipincaihuiying)」という歌で、恋愛の歌のようです。実は、これは「台湾語(福建省の南の<闽南话>の方言と同じです)」で歌われている歌ですから、耳で聞いて覚えたのです。授業の時に、一度だけですが歌いましたら、拍手喝采を受けたほどでした。日本の「歌謡曲」、「演歌」と同じで、聞きやすく、歌いやすくもあるのです。

バスの運転手も日本の歌を口笛で吹いていますし、文化的にも中国と日本の距離は、至近にあることになります。山の中にある「森林公園」に連れて行っていただいた時も、信州や上州の山奥に分け入ったと同じ雰囲気がして、枯葉を踏みしめた感触も、立ち上る枯葉の匂いも、みんな「懐かしい!」思いがしたほどでした。自然の植生が似ていて、同じ米の飯を食べ、特に華南では「海鮮料理」が好まれ、同じように煮込んだ「うどん」もあるほどです。油分が少なかったら、全く同じではないでしょうか。

もう路傍では、「焼き芋」が売られています。ドラム缶を加工したものに車輪をつけて、引き売りをしているのです。あの独特な匂いが鼻をくすぐります。やはり、ここも秋深しで好いのでしょう。もう、明日からは「十一月」ですから。