先日、いつものバス停で降りて、大通りに面した門から、アパート群の敷地の中に入って、我が家に向かって歩いていました。建物の角を曲がったところで、聞き覚えのある音楽が聞こえてきたのです。「ちいさい秋見付けた・・・」の曲ではありませんか。まさか、日本の童謡が聞こえるとは思いもよりませんから、驚いたり、嬉しかったりだったのです。立ち続けの授業を終えての帰りでしたから、日本の歌にねぎらわれたようでした。木々は緑の葉をつけ、日差しも暑さを感じ、時々汗ばむような、こちらの秋なのです。それでも吹く風に、なんとなく秋が感じられ、朝晩は、「冷やっ」とした感覚はあります。その曲を聞いた瞬間、日本にいるような錯覚に襲われてしまいました。こう言った歌を知っておられる方がいて、時季に叶ってネットから聞いているのでしょうか。この辺には日本人がいるはずがないのです。
今、PCに向かっているのですが、台所の開けた窓から、正門の隣にある「幼稚園」から音楽が聞こえてきます。この連続する音楽で、園児が踊っているのです。その定番が、「ちびまる子ちゃん」のテーマミュージックなのです。上海万博でも、谷村新司が、「昴(すばる)」を堂々と歌ってもいました。もう少しさかのぼりますと、「北国に春」が、この国で大流行していて、多くの人が、今でも口ずさんでおいでです。「好いもの」には、国境がないのでしょうか。過去のいきさつを度返しして、受け容れる度量の大きさや広さを、こちらのみなさんに感じるのです。
私には、「中国の歌」が、日本で歌われていた記憶がないのです。「蘇州夜曲」や「上海ブルース」などは知っていますが、これらは「曲名」だけで、日本人が作った歌です。それで、私は、この街のみなさんが、自転車をこぎながらでも、店の前にスピーカーを置いて流していても、よく歌っている歌を覚えたのです。大陸の歌ではなく、台湾の歌手が歌って、以前大流行した歌なのだそうです。一緒に教え子と歌ったこともあります。「愛拚才会赢(aipincaihuiying)」という歌で、恋愛の歌のようです。実は、これは「台湾語(福建省の南の<闽南话>の方言と同じです)」で歌われている歌ですから、耳で聞いて覚えたのです。授業の時に、一度だけですが歌いましたら、拍手喝采を受けたほどでした。日本の「歌謡曲」、「演歌」と同じで、聞きやすく、歌いやすくもあるのです。
バスの運転手も日本の歌を口笛で吹いていますし、文化的にも中国と日本の距離は、至近にあることになります。山の中にある「森林公園」に連れて行っていただいた時も、信州や上州の山奥に分け入ったと同じ雰囲気がして、枯葉を踏みしめた感触も、立ち上る枯葉の匂いも、みんな「懐かしい!」思いがしたほどでした。自然の植生が似ていて、同じ米の飯を食べ、特に華南では「海鮮料理」が好まれ、同じように煮込んだ「うどん」もあるほどです。油分が少なかったら、全く同じではないでしょうか。
もう路傍では、「焼き芋」が売られています。ドラム缶を加工したものに車輪をつけて、引き売りをしているのです。あの独特な匂いが鼻をくすぐります。やはり、ここも秋深しで好いのでしょう。もう、明日からは「十一月」ですから。