極意

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電動自転車が、人と自転車と車の間を、巧みにすり抜けて通って行きます。オートバイのようにエンジン音がしませんので、真横をスッと通り抜けて行く時には、「ウッ!」と何度も驚かされたのです。今では、慣れたので、歩きの進路を急に変えたりしません。もし進路を変えなければならない時には、ゆっくりとした動作をする様にしているのです。そうすると電動自転車も車も、こちらの動きを察知できるからです。これは安全のために身につけた「極意(ごくい)」です。ここ華南の街は、この電動車が最も多い街だと言われています。以前は大型だったのですが、数年前から小型化に規制されてきています。「便利ですよ!」と言われて、買うことを勧められるのですが、よく電動車同士やバスなどとの衝突事故を目撃していますので、乗りたくありません。

最近、切る風が冷たくなったからでしょうか、この電動車に乗る女性の服装が特徴的になってきています。長袖のシャツや上着を、反対に腕を通して、お腹に背の部分を持って来て着ているのです。風防の為です。初めて目にした時に、「変なファッションだなあ!」と持って眺めていましたが、瞬く間に流行しているのです。この街の風物詩の一つです。

この電動車に、家内は日本にいます時に、乗っていた時期がありました。こちらのは結構高速のスピードで風を切って行くのですが、日本製は速度制限があって、自転車並みの速度なのです。何時でしたか、下を電車が走っている高架になった坂道を、家内が登っていました。バッテリーが足りないのでしょうか、あえいでいて自転車の私の方が速かったことがありました。こちらのは、親子三人、友達三人で乗っても、坂道なども「平気の平左」で、ズンズンと登って行くのです。最近自家用車が増えていますが、夫婦と一人っ子が、一台の電動自転車に相乗りしています。さながら、マイカー以前の中産階級の家族の平均的な様子でしょうか。

時々、天気の悪い雨の日、大きな荷物を持っている日などには、「車があったらなあ!」と思うことがあります。40年も車に乗ってきましたから、ほとんどの時が「歩き」と「公共バス」、時々は「タクシー」、たまに「友人の車」で生活していますので、そんなことを思ってしまうのです。こちらの免許証を取って、自家用車で道路の繰り出しても、事故車同士の運転手が、口角泡を飛ばして、丁々発止とやり合う様子を見て、「これができなければ運転をしない方が好い!」と結論したのです。

「足から弱くなるから!」と家内と話し合って、「歩くことが健康管理に最高だ!」というのも、もう一つの結論なのです。でも、たまの休みに、郊外の大自然の中に行ってみたい時には、「ああ、車が・・・」と思ってしまうのです。

(絵は、木曽道中の熊谷宿の「駕籠かき」の図です)