碧空

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「抜けるような空」のことでしょうか、秋空を、「天高く」と形容するようです。台風接近を知らされた日は、まさに「碧空(へきくう)」でした。私たちの住んでいる華南の街は、中国で、「最も自然環境に恵まれた街」とのお墨付きをいただいているそうです。それなりに、長年の植樹や環境保全を続けてきたことがあっての今なのです。多摩川を挟んで東京の西にある「川崎」は、京浜工業地帯の一角で、大企業から零細企業まで、多くの工場がひしめき合って、日本の工業化の要をなしてきた街の一つでした。空気の悪さでは、日本一だった街で「喘息」の発病率も群を抜いて高く、ここから長野や山梨の山村に、疎開した児童も多くいました。「川崎公害」と言われたほどです。石油のコンビナートができ、様々な物資のための運送業のトラックの排気ガスは半端ではなかったからだと言われています。

かつて北京の空も、天高く抜けるような青さだったのですが、最近では「外出を控えてください!」と警戒情報を発するような事態です。まだ、暖房用の石炭を燃やし始める時期にはなっていませんが、電力消費量が急増し、火力発電に頼る中国に電力事情によって、大気が汚染しているのです。それに加え、自家用車の普及があげられます。 二酸化ガスの排気量の増加も半端ではないからです。我が家の上の階のご婦人も、運転免許証をとられて、このところ自動車も手に入れておいでです。駐車スペースが足りなくて、私たちの住む公寓(アパート)の敷地内は、車がひしめいて、植え込み中にも駐めるような現状です。「中国一」の自然環境を誇る街のこちらも、ゆくゆくは排気ガス天国になってしまうのでしょうか。

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実は、「公害対策費」は莫大な資金が必要なのです。静岡県下に富士市があって、紙パルプの製紙工場の街です。「垂れ流し」を住民から指摘されてから改善に取り組んだのですが、その経費は驚くほどの出費だったそうです。新聞購読者が減って「紙の時代」が終焉を迎えようとしている今、製紙工業の行く先も心配ですが。これから中国は、「公害対策」が、最大の課題だと、世界から指摘されています。そのためには、それだけの資金の準備が不可欠でしょうか。そうでないと次の世代に、好い「住環境」を渡せなくなってしまいます。

中国に来る前に住んでいた日本の街は、「自然要塞」のように、巡りに山が林立し、真冬には山颪(やまおろし)の北風がきつかったのですが、空気も水も農産品も抜群に美味しかったのです。とくに山間(やまあい)に分け入ると、「湧き水」があり、それを両手ですくって飲むのですが、ミネラルが豊かで、「うまい!」と声が出てしまうほどでした。人が増え人家が建ち、物流が増えて自然が破壊される、お決まりのサイクルなのですが、「逆サイクル」にすることはできないまでも、「これ以上は…!」の決心で、自然を取り戻したいものです。

二十数年前に、北京から「万里の長城」の観光に出掛けた時に、頂上から見上げた空が真っ青だったのを覚えています。その時、中国で何軒目かの「マクドナルド」が、駐車場の脇に開店営業したばかりだと聞いたことが、なぜか記憶に残っております。

(写真上は、「秋の空」、下は、2006年の冬に天津のアパートのベランダから撮った「暖房用温水施設の煙突」です)