うな丼

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今日は、しきりに「うな丼」が食べたいのです。きっと「土用の丑(うし)の日」が近くて、お腹が何かを感じているのかも知れません。検索してみましたら、今年は<7月29日>だそうです。<腹時計>に、一週間ほどの誤差がありましたが、結構近いので驚いてしまいました。『よく食べた!』と見栄を張りたいのですが、偶にしか食べませんでした。

何時でしたか、天竜川の河畔にあった、「鰻屋」でご馳走して頂いたことがありました。川の流れを眺めながらだったからでしょうか、旧友と再会したからでしょうか、本当に美味しかったのです。結構、値の張った物だったのでしょう。どこでも<特上>を食べれば,満足できるのかも知れませんが,<並>だと、『食べた!』だけで、舌鼓を打つまではいかないのかも知れません。

食道楽の父でしたが、鰻を宅配してもらって食べたことはなかったと思います。子どもの頃に住んでいたあの街には、寿司屋はあっても、鰻を焼いて出す店はなかったのです。台湾では、輸出用に養殖をしていて、何時だったか、お客さんにもらったと言って、真空パックのタレ付きの焼き鰻を頂いたことがありました。期待したのとはちょっと味が違ったのですが、感謝して食べました。

こちらでは「鰻魚manyuマンイイ」と呼んで、ぶつ切りの料理が出されてきます。頂いたことがありますが、開いて、骨を抜いて、醤油に漬けながら、備長炭で団扇を使いながら焼き上げた、あの日本式の鰻の味が忘れられないので、ちょっと残念でした。誰が、あんな風に調理し始めたのでしょうか。「日本料理」が、世界文化遺産に登録されるのは、『もっともだなあ!』と思うのです。繊細で、手が混んでいて、持ち味を生かし、美しいのです。<匠(たくみ)の味>と言うのでしょうか。

『食べたい!』 のは、食いしん坊だからだけでなく、健康だからでしょう。と言うことで、今度帰ったら、誰かに期待しないで、自前で食べようと思っています。父が入院中に、『食べたい!』と言ったので、神田まで行って買って、父に届けた、あの父の贔屓(ひいき)の「鰻屋さん」に行ってみましょう。そう言えば、今年の一月の帰国時に、長女と次男と家内の四人で、食べていました。

(写真は、美味しそうな「うな丼」➡︎WMより)

孤児

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1955年(昭和30年)に、作詞が宮川哲夫、作曲が利根一郎、歌が宮城まり子で、「ガード下の靴みがき」と言う歌が世に出ました。

1 紅い夕日が ガードを染めて
ビルの向こうに 沈んだら
街にゃネオンの 花が咲く
おいら貧しい 靴みがき
ああ 夜になっても 帰れない

(セリフ)
「ネ、小父さん、みがかせておくれよ、
ホラ、まだ、これっぽちさ、
てんでしけてんだ。
エ、お父さん? 死んじゃった……
お母さん、病気なんだ……」

2 墨に汚れた ポケットのぞきゃ
今日も小さな お札だけ
風の寒さや ひもじさにゃ
馴れているから 泣かないが
ああ 夢のない身が 辛いのさ

3 誰も買っては くれない花を
抱いてあの娘(こ)が 泣いてゆく
可哀想だよ お月さん
なんでこの世の 幸福(しあわせ)は
ああ みんなそっぽを 向くんだろ

これは、戦争後の子どもたちの哀感を歌った歌です。少なくとも上の兄たちは、この靴磨きの少年と同じ世代で、上野や新宿や立川の駅頭で、靴磨きをしていても不思議ではありませんでした。ところが兄たちや弟や私には、実の両親がいましたし、当時は、中部の山の中で生活をしていたので、このような境遇とは無縁で、恵まれていたわけです。

父は、鉱山技術を学んでいて、国内ばかりではなく、朝鮮や満州に、技師として働いていましたから、所帯を外地で持っていたら、終戦を、遼寧省で迎えてたかも知れません。そんな可能性があったのですから、二人の兄と私は<残留孤児>になっていたことだってありそうです。靴磨きの少年の様子を、ぼんやりと思い描きながら、この歌を聞き、口ずさんでいたのを思い出すのです。

この少年たちは、自活していたのか、仕切り屋の親方に、靴磨き道具一式をあてがわれ、働いた分の何割かをもらっていた、戦争孤児が多かったのでしょう。新宿の青梅通り沿いに、今でも、JRの線路の東側と西側をつなぐ地下道があると思うのですが、ここに身寄りのない子たちがいたのを覚えています。篤志家のみなさんが、この少年たちのお世話をして、社会に送り出した功績は大きいと思います。また、アメリカに<里子>として行った子も多かったそうです。

あのような、社会から置き去りにされていた子どもには、生存力や生命力が強く、特別な<守り>があったのでしょうか、もう七十代を過ぎておいででしょう。好々爺、好々婆になって、ひ孫たちに囲まれて、幸福(しあわせ)に微笑み返されていたら好いですね。誰にも、辛い過去があるのですから。

(写真は、yahoo検索から「靴磨きの少年」です)