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昔、「雨あがる」と言う映画がありました。宇野重吉のご子息で、寺尾聰という俳優が主演した、時代劇でした。主人公は、奥州の小藩の侍でしたが、机に向かう仕事に耐えられず、脱藩し、江戸に向かう旅に出ます。街道沿いの城下町にある剣術道場を訪ねては、道場主と一手交え、時を見計らって、『参った!』と降参するのです。すると、気持ちを好くした道場主は、道場の奥座敷に招いてくれ、酒と魚を供してくれる。路銀(ろぎん、餞<はなむけ>のお金)までもいただけると言う手法で、食いつないで、江戸に登った脱藩浪人が、主人公でした。
どこの藩に召し抱えられても、長続きをしないで、諸国を旅をし続ける途中、大きな川が、「川留め」になってしまい、川辺の安宿に逗留するのです。ここから映画が始まっていました。宿には、足止めの商人や芸人などが、長雨を避け、川開きを待つ間、宿から出られない鬱憤で、泊り客の間で悶着が起きてしまいます。主人公の浪人は、城下町の剣術道場に出掛けて、「賭試合」をしてお金を得るのです。それで魚や野菜や米や酒を、大量に買い付けて、宿に持ち帰って、手料理で酒宴を催すのです。
その大盤振る舞いで、一遍に宿が和やかになって行くのです。そんな内容の映画でした。主人公の木原伊兵衛を演じた寺尾聰は、歌手でしたが、お父さんの血でしょうか、芝居上手の好い俳優です。今日は、「マリヤ」と名の付いた台風8号が襲来して、「最強」だと言われていますが、さほど雨も風も強くなく、通過して行った様です。
借家に、私たちは住んでいますが、もし川辺の安宿で、「川留め」になって過ごしていたら、その映画と同じ様に、未知の旅人との間で一悶着起きてしまいそうな雨の日の多いこの頃です。西日本では、大勢の犠牲者と行方不明者が出てしまい、大惨事になってしまいました。復旧も目処(めど)が立たない様です。物や時間も失った方が多いそうです。大雨の中で、伊兵衛が、『この雨はきっと止みますよ。これまで止まなかった雨はなく、みんな止んだからです!』と、機知に富んだ台詞を語っていたのを思い出しました。
あの「ノアの洪水」が引いた後、造物主は、虹を立てて、『水によって滅ぼさない!』と、永遠の契約をしています。としますと、人類は、大水によっては滅びることはなさそうです。自然界の暴挙を押し留める力があると言うことです。やはり、人心の乱れや強欲と、自然界の不調和と、何か関係がありそうですね。地球の保全は、私たち地球人の義務に違いありません。確かに、あの川辺の宿の旅人たちは、「雨あがる」を見届けて、それぞれの目的地に出て行きました。
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