詩人

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 JR中央線の豊田駅の発車時に、ホームで流れる〈発車melody〉は、「たきび」です。弟が住んでいまして、コロナ前はよく乗り降りをしました。岩手県で生まれ、東京都下の日野市で亡くなるまで生活をした詩人の巽聖歌(たつみせいか)が作詞をしています。作曲は、「不思議なポケット」にも曲を付けた渡辺茂です。

かきねの かきねの まがりかど
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
きたかぜぴいぷう ふいている

さざんか さざんか さいたみち
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
しもやけおててが もうかゆい

こがらし こがらし さむいみち
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
そうだんしながら あるいてる

かきねの かきねの
きたかぜぴいぷう ふいている

こがらし こがらし さむいみち
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
そうだんしながら あるいてる

そうだんしながら あるいてる

 この巽聖歌は、岩手県盛岡市に隣接する紫波町(旧・日波町)に生まれ、父が生まれ育ち、父の祖父がいた横須賀海軍工廠で働きつつ、作詞をしていた方です。戦後、日野市で生活をしました。私は、結婚してから、同じ日野市に住みまして、弟も同じ日野市の旭ヶ丘に、結婚後に住んでいるのです。

 若い日に、教会に導かれた人でした。北原白秋に師事し、新美南吉と親しい関係があって、新美が亡くなる頃には、よく世話をしています。私の恩師は、卒業していく私たちに、『詩人たれ!』と一言語ってくれました。多才な人だった寺山修司は、自分を「詩人」だと言って自己紹介をしていました。

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 やはり、「感性」が飛び抜けて鋭かったり、豊かだったりする人なのでしょうか、「詩人」って。最近、家内が図書館で、谷口ジローの「歩く人」を借り出してきて読んでいました。椅子の上にあったので、私も読んでみました。緻密な描写の漫画で、言葉数は少ない一編一編の日常を、散歩する主人公が、東京都下の北多摩郡の街を歩いているのだと、北多摩で育った家内が、『見慣れた光景が描かれていわ!』、そういっていました。

 詩のような漫画で、人気作家であることに納得しました。物や風景、人の営みなどに無関心ではないような生き方が、「詩人」にはあるのでしょうか。それでいて、どこか夢を見ているような理想家でもありそうです。そんな人になるように、恩師は願ったのでしょうか。横須賀にお住まいでした。実に重い Thema をもって生きるように激励され、それが何かをまだ考えつつある今なのです。

(豊田駅の古写真、「歩く人」の一コマです)

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