うらら

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 作詞が野口雨情、作曲が草川信の「春の歌」は、小学校の唱歌でした。みよちゃんの様に、本格的な春を待ち望む気持ちが、この三月になると、思いの内に湧き上がって来ます。

1 桜の花の 咲く頃は
うらら うららと 日はうらら
ガラスの窓さえ みなうらら
学校の庭さえ みなうらら

2 河原(かわら)で雲雀(ひばり)の 鳴く頃は
うらら うららと 日はうらら
乳牛舎(ちちや)の牛さえ みなうらら
鶏舎(とりや)の鶏(とり)さえ みなうらら

3 畑に菜種(なたね)の 咲く頃は
うらら うららと 日はうらら
渚(なぎさ)の砂さえ みなうらら
どなたの顔さえ みなうらら
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 「うらら」は漢字で「麗」と書きます。「源氏物語」の中で、紫式部が、次の様な歌を読んでいます。

春の日の うららにさして 行く船は 棹のしづくも 花ぞちりける

 滝廉太郎は、隅田川を眺めながら、この和歌を引用したのでしょう。春の川が、のたりのたり、のんびりと流れていたからです。紫式部の時代も、滝廉太郎の時代も、私たちの時代も、隅田川は同じです。友人の社宅に居候していた時、江戸情緒が微かに残る、隅田川界隈を歩いたことが何度もありました。コンクリートで護岸された墨田の流れには、情緒はありませんでしたが、流れる水音は同じ、陽の光も、わずかな土手の土に咲く花も同じでした。早春の麗かさが溢れていました。

 今、巴波の流れを朝な夕に眺めて、白鷺が餌を求めて川面に立っています。今朝は、母鳥に習って、小さな生まれて間もない子白鷺が、じっと餌を狙い定めていました。たまに鴨が騒々しく鳴いています。《春遠からじ》の北関東の商都です。

(隅田川の様子です)

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