西紅柿

 

 

一年三百六十五日、欠かさずに食べている物が、私にはあります。よくも飽きもせずに食べるものだと、われながら呆れたり、感心したりするのです。こちらで生活し始めて、とくにこの華南の街に来る以前は2日に一度くらいだったでしょうか。でもこの十年以上は、毎朝励行しているのです。そう、《トマト》です。こんなに思い入れしている食べ物は、他にないのです。

スーパーマーケットや八百屋さんに行くと、まず目を向け、一直線で駆けつけるのが、山と積まれたトマト売場なのです。家に二つ三つあっても、誘惑されて買ってしまう始末です。どうして、こんなに好きになってしまったのか、自分でも分からないのです。きっと、あの《真っ赤》な色と、何とも言えない味とに魅せられてしまっているのかも知れません。作詞が荘司武、作曲が大中恩の「トマトって」の童謡があります。

トマトって
かわいい なまえだね
うえから よんでも
ト・マ・ト
したから よんでも
ト・マ・ト

トマトって
なかなか おしゃれだね
ちいさい ときには
あおいふく
おおきくなったら
あかいふく

これは、アンデス山脈の山岳の高原、ペルー原産で、メキシコに入り、それがヨーロッパに渡り、中国を経て日本に入ったそうです。それは、江戸期になっての渡来だったそうです。それで、中国では、「西红柿xihongshi/番茄fanqie」、日本では「唐柿」と呼ばれたそうです。初期には観賞用だった物が、やがて改良されて、食用になったのです。文明開化後の明治期なってから、日本人が食べ始めたのだ様です。でも本格的に食べられる様になったのは、「昭和」になってですから、《昭和の野菜》なのでしょう。

そうなんです、今朝も食べました。こちらでは卵とトマトのスープを作って飲み、生で食べることはなさそうです。でも最近は、ハンバーガーサンドに、スライスしたものが入っています。カレーにもスープにも、このトマトは使われて、わが家では《大モテ》です。留学にきている学生、教え子、家内の日本語クラスの学生、訪問客に、《トマト入りカレー》を何度作って上げたか知れません。

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