早春の花

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広島県呉市の灰ヶ峰に咲く「タムシバ(ニオイコブシ)」と「アセビ(馬酔木)」だそうです(「里山を歩こう」から)。まるで「春の王者」のように咲き誇る桜に、誰しもが思いを向いてしまうのですが、分け入る山中に、ひっそりと春の訪れを知らせて、綺麗に咲いている花があるのですね。桜から目を反らせて、思いを、そこに向けて見たいものです。

瀬戸内海に面した呉市は綺麗な街なのでしょう。この町の高校の校長先生とお会いした事が、ずいぶん昔にありました。隣には江田島があって、旧海軍の兵学校があった様です。少女だった母の憧れの人が、そこにいて、国を守ろうと学んでいたのです。
一度訪ねてみたいし、里山も歩いてみたいものです。
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30年

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私たちの長男が15才(中3)、長女が13才(中1)、次女が11才(小6)、次男が7才(小2)だった、1988年の3月24日に、上海近郊で列車事故が起こり、高知学芸高校の一年生28名と、引率教諭の1名が、事故死をされました。今では中国版の新幹線網が中国の全域に張り巡らされていますが、当時の中国は多くが単線走行でした。信号無視をした機関士の停止信号無視の過ちで、上下線の列車同士が正面衝突して、大事故を起こしたのです。

高度経済成長期の海外旅行ブームの渦中の海外での大事故でした。子育て真っ盛りの私たちにとっても、大変悲しいニュースを耳にしたのです。この事故現場の近くは、今では「上海西站(駅)」が設けられています。もう《30年》の歳月が経つのには驚かされているところです。事故で亡くなられた方の世代は、今では46才、高校生たちの親御さんになっておいでです。ご両親も私たちの世代なのです。

私たちの国は、地形上、火山帯に位置していますので、火山の噴火や地震といった<自然災害>が多い事、台風の進路に位置しているために、暴風雨災害に多く見舞われるのです。でも人の過ちで発生する<人災事故>、<不慮の事故>は、ご家族にとっては諦めるに諦められない事でしょう。

事故が起きにくく、サーヴィスが良くなるために、《安全をもたらす秘訣》があります。その業務に携わる方の《待遇》の向上です。平たく言いますと、高給与が支給される事なのです。財政的な《潤い》が生活を安定させ、仕事をする意欲や喜びが増し、安全への思いが高まり、責任が強固にされるのです。自分の仕事への《正当な評価》こそが、仕事への誇りを増させ、安全を生む出す一番の対策です。

ずいぶん昔ですが、セミナーがあって宿泊したホテルのフロントや仲居さんの仕事ぶりが、以前宿泊したホテルに比べて、格段の良さを感じたのです。テキパキとしていて笑顔が素敵だったのです。そのセミナーの事務局の奉仕をしていた時、その同僚が、「何故か」を聞いたのです。その仲居さんが即答したのは、『給料がよいからです!』でした。

人は、自分が正しく、また、よりよく評価されるなら、勤労意欲や奉仕の気概が増すのです。家でも学校でも職場でも、さらにはクラブや愛好会でも、褒められたり、感謝されると、人は気持ち良くなって、より以上の務めを果たすようになります。いつでしたか中部山岳の山深い、平家の落ち武者の末裔が住んでいると言われた、ある部落の公共の宿泊施設に行った時の事です。『やっぱり平家の末裔なので、顔立ちが普通の人と違うんですね!』と、そこで働くおばちゃんに言ったら、パッと目と顔が明るくなって、喜びを満面にあらわしたのです。

労働環境、労働対価が良くなり、している仕事を感謝されたり、褒めれれると、事故は必ず減ります。子どもたちが、みんな独立して、それぞれに社会の中で生きているのを思うにつけ、30年前の悲惨な事故を思い出させられてしまいます。生き残った人たち、事故に遭わなかった人たちも、その事を忘れずに、今を生きるべきなのでしょう。そして今、課せられた職務を楽しく果たしてほしいと願う、大陸の父です。
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