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下の9人の人が、新コロナウイルスに罹って、重症です。ところが、ここの病院には、一台の人工呼吸器しかありません。それを誰に、どの様な順序で使わせるか、あなたが担当医師だとしたら、どういう基準で決定しますか。
IQ 180の優等生
障害者を追っている婦人
ヤンチャで問題児の学生
ガンを病んでいる老人
志豊かな青年政治家
派遣で働く人
生まれたばかりの嬰児
75歳のお爺ちゃん
自分
これは、「トロッコ問題」として有名な主題でもあります。
『制御不能(コントロール不能)になったトロッコ(路面電車)が線路を暴走している。
このまま暴走すると、前方にいる線路上の5人の作業員を轢(ひ)き殺してしまう。
この5人は、谷間にいるため、そこから逃げることができない。
一方、その5人の手前には分岐があり、路面電車の進行方向を変えることができる。
ところが、この別の線路の先には作業員が1人いて、そちらへ進行方向を変えれば、その1人を確実に轢き殺してしまう。
この路面電車の運転手は、どちらの選択肢を選ぶべきか?』
どう決定したらいいのでしょうか。カナンの街の大学の日本語学科の学生に、この問題で話し合うセミナーを持ったことがありました。二者択一で、どちらかに加わって、“ デベイト(debate)"してもらおうとしたのです。これは自分の決定ではなく、デベイトをして、意見交換をしてもらうためでした。結局、活発な意見の交換はできませんでした。なにせ3年間の日本語学習では無理でした。きっと彼らは、母国語でしたかった様で、時期尚早だったのです。
でも、「問題意識」を持つこと、倫理的にどうあるべきかについて、考えることができたことは有益だったと思うのです。人の考え方に傾聴し、自分と違った考えを理解できるからです。唯物論の教育を受けてきた彼らが、「唯心論」のものの考え方の動機付けを与えられたのは、よかったと思っています。それが私のその科目での授業目標だったからです。
それは、人間観、死生観、価値観などが問われるのでしょうけど、どんな動機や基準で人を評価するのか、誰と交流するかなども問われることでしょう。トロッコ問題は、数分、数秒で決めなければなりません。ハンドルを握っている人は、どうしても決定をしなければなりません。果たして、私たちは、今日日の問題に、どう決め、どう関わったらよいのでしょうか。
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