霜月

 

 

いよいよ「霜月(しもつき)」、十一月です。この七日には、「立冬」となります。中国の黄河周辺の地域を基準に、太陽の動きを二十四に分けて、「二十四節気」が定められました。それを、日本でも受け入れて、旧暦、農業暦で、季節を暦の上で定めたのです。

今朝の外気は冷たく、ベランダの寒暖計は、"19℃"を示しています。濃紫の朝顔の花が開きました。まだ日の光がありませんので、鮮明ではありませんが、実に綺麗に咲いてくれました。

暦の上では冬が訪れるのですが、季節としては一番快適な時季でしょうか。もう学生のみなさんは、学校に「上课shangke」、出掛けて行く姿が見られます。秋を見つけに、私も出掛けて行きたいものです。

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奈々子

 

 

奈々子に       吉野弘

赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき
他人があり
世界がある

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた

苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい

自分を愛する心だ

こんなお父さんに見守られ成長した「奈々子」に会ってみたいと思うのです。《自分を愛すること》を教えたお父さんが素晴らしいからです。自己否定、自己否認が、多く見られるこの世で、ありのままの自分を愛せたら、順境の日も驕らず、また逆境の日にも凹まずに生きていけるからです。自分を愛せたら、隣人を愛することだってできます。そんな赤い頬の「奈々子」に会ってみたい!

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