竹とんぼ

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実は、今だから告白することにします。<欲しかった物>が三つ、四つありました。一つは、<オートバイ>です。中学の時に、弟が友人のお母さんから、<ラビット・スクーター>を貰ってきた事がありました。それを、住んでいた家から高台にある畑に引いて行って、それに乗ったのが、エンジン付きの乗り物で、初めての乗車でした。本当に面白かったのです。こがないで動くのに魅せられてしまったのです。それで高校生の時に、“Harley-Davidson”の《750ccモーターバイク》が欲しかったのです。

もう一つは、<カメラ>でした。小さな機械が、目で見た、同じ光景を写すことができるのに、小さいん)頃に驚いたからです。もちろん日本製が優れているには重々知っていました。それでも、ドイツ製の《ライカ》が欲しかったのです。見るだけで、手にとって見たこともなかったのですが。多分手にとったら、脇目も触らず、後先を考えずに、月賦払いで買ってしまうのを恐れたからです。それだけ、魅せられていたのです。

三つ目は、ジープでした。アメリカ製のジープは、子どもの頃、米軍基地の近くの町で育ちましたから、甲州街道を走る姿を見ていました。それで、東京から、中部圏の街に、アメリカ人起業家について行くときに、休みに山の中を走り回りたくて、スズキ製で、しかも軽自動車の《ジムニー》を買うつもりでした。でも子どもが次々に与えられて、断念しました。

モーターバイクに跨るか、ジムニーに乗るかして、ライカを手に、あちこちと旅をしたかった、これが夢だったのです。何一つ叶えられずに、今春、帰国時に自動車運転免許の更新をせずに、失効してしまいました。アメリカの運転免許のライセンスを取得し、アメリカで車を運転したことがありましたが、もう叶いません。あれほど欲しかった《ライカ》だって、スマホやiPadの登場で、もう不必要になってしまいました。

我儘に育ってしまった私ですが、けっこう物欲は強くなかったのかも知れません。スーパーの通路の上に、仰向けになって、足と手をバタバタさせながら、わめき散らしながら、『買ってー!』とやってる子を、よく見掛けましたが、あんなことはしたことがありませんでした。ああする大人だって例外ではありません。『欲しい物は、どうしても手に入れる!』人がいるからです。

一度も、そういった振る舞いをやったことがないので、今更できません。今欲しいのは、《竹トンボ》です。事務所を、みんな素人で建てていた時に、近所の大工さんが、手伝ってくれ、その後、子どもたちに、手作りの《竹トンボ》を持ってきてくれたことがありました。エンジンもなく、ガソリンも要らず、排気ガスはないし、手もみで空中に飛び上げられるのです。この街は、竹製品の多い地方ですから、どこかに、同じような手工品がありそうです。秋空に、高く飛ばしてみたいものです。

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