私が、長い間、働いた街に、同業者のM氏がいらっしゃいました。九州の出身で、我が家のように子沢山でした。この方の家を訪ねると、玄関に、子供たちが全員集合で歓迎してくれたのも、我が家と似ていました。私たちの末の子と同じ年に、双子が与えられていました。気さくで、明朗で、ちょっと、悪戯っぽく上目遣いをされる愛嬌のある方でした。七歳ほど上の方で、私たちの所にも、よく来てくださいました。弟のように思ってくれていたのかも知れません。
私が、三十年前に手術をした時には、彼の事務所の若い方たちが、お見舞いにきてくれたことがあったのです。また、私たちの事務所を、素人だけで手作りしていた時も、独身の大工さんが、彼の事務所に出入りされていて、大工道具一式を持ってやってきて手伝ってくれたこともありました。
その街で、お互いに余所者同士(そこに私は生まれましたが、育ってはいない街でした)だったからでしょうか、若い私を気遣ってくださったのです。こちらに来る前に、ご挨拶に行った時に、『茨城に越すんです!』と聞いたまま、私たちはやって来てしまい、その後音信不通でした。その時は、病気をされておいででした。この二月に帰国しました時に、友人の所を訪ねましたら、この方をご存知で、すでに退職されて、お嬢さん家族と一緒に生活をされていると聞きました。
筋肉のお病気で、病状も進んでおいでのようです。この方の生き方が好きで、今のような生き方をしているのにも、多少の影響を受けております。病まれて弱くなっている姿を、昔馴染みには見せたくないのでしょうか。今度、帰国の折に、お訪ねたいのですが、遠慮すべきなのでしょうか。若くて元気なときに行き来した人ですから、お会いしたい一人です。病状が膠着状態だと好いのですが、ご無事を願っております。