初めてコカ・コーラを飲んだのは、弟の同級生のお父さんが、アメリカ軍基地に勤めていて、そこで飲まれている瓶入りのコーラを、弟がもらって帰ってきたのを、回し飲みした時でした。その頃、カゼをひいて病院に行きますと、「水薬」が処方されていて、スプーンにとっては、よく飲まされたのですが、その味に、『似てる!』というのが第一印象でした。だから、『うまい!』とは思えず、『アメリカ人は、こんなまずいものを飲んでるのか!』と思ったことでした。でも高校生になった頃には、甘いし、スカッとする炭酸飲料なので、よく買っては飲ようになっていました。今は、出されたら少し飲みますが、ほとんど飲むことはありません。
父の家の食卓に、よく母が作って並べてくれるようになったものに、「ハンバーグ」がありました。もう60年近く前のことです。駅の近くの肉屋で、牛肉の赤身を挽いてもらって「挽肉」にし、それに、玉葱と人参をみじん切りにして、パン粉と卵とを加えて小判状の形に整えて、フライパンで焼いて、ソースやケチャップをかけ、サラダを添えてくれました。『こんなうまいものをアメリカ人は食べてるのか!』と、しきりに思って、半分アメリカ人になったような気分がしていました。ところが、これは、ドイツのハンブルグの食べ物で、アメリカのものではなかったのを後ほどになって知ったのですが、『ハンブルグ人になったようだ!』と言うべきでした。
東京では『マック!』、関西圏では『マクドウ!』と呼ばれる、マクドナルドのハンバーグを最初に食べたのが何時だったか覚えていませんが、母以上の味ではなかったのは確かでした。最近、私たちのアパートの向こう側のモールの中で、「カールズJr」というハンバーグショップが営業しています。ごくたまに行って食べますが、マックの比ではなく実に美味しく、それこそアメリカンテイストなのです。私のアメリカ人の恩師が〈マックフアン〉でしたが、生きていて、私を訪ねてきたら、そこにお連れするか、自分でハンバーグを作ってご馳走するのですが、4日ほど前のサンクスギビングデーには、78歳になっていたのです。もう召されて十年になったのですから、時間のたつ速さに驚かされます。
この恩師は、日本にいた時に、アメリカ的生活をすることなく、日本人のような食生活をしていました。このサンクスギビングデーの食べ物、「ターキー(七面鳥の肉)」を食べる習慣がなかったのです。ある時、彼らの友人が、これをお土産に持って来て、おすそ分けしてもらったことがありました。初めて食べた私は、『こんなうまいものをアメリカ人は食べているのだ!』と、実に羨ましく思ったことでした。アメリカのバガーショップとかサンドウイッチショップに行きますと、必ずといって「ターキー」のものがあるのです。これが実に美味しくて、これを食べるだけでもいいから、アメリカ旅行をしてみたいと思うくらいです。
やはり食べ物の話がしたくなるのは、「食欲の秋」だからでしょうか。先日、山の中に行った時に、道端で売っていたサツマイモを3種類買って来ました。空気がきれいな山の上で栽培されたものですから、とても美味しいのです。このサツマイモといえば、子どもたちが幼稚園に通っていた時に、みんなで苗を植えて、秋になって収穫するという実習があって、手伝わされたことがありました。「芋づる式」ということばがありますが、芋同士がつるにつながっていて、ゾロゾロと土に中から出てきて、子どもたちは大喜びでした。ホクホクした、蒸かしたサツマイモは実に美味しいものです。
それでは、これから残してあるサツマイモを蒸すことにしましょう。今朝は今秋、一番寒い朝でしたから、ホクホクしたサツマイモの食べごろになってきています。健康であることを感謝しつつ、「秋の味覚」の一つを〈十時のおやつ〉といたしましょうか。
(写真は、収穫されたサツマイモ(薩摩芋、甘藷)、その下は、薩摩芋の伝播の流れです)