驚いたこと

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 2017年の春先でしたが、ある映像を見ました。幼稚園児たちが、あるご夫人の前で、感謝とお願いをしているもので、驚いてしまったのです。『中国から鉄砲とかくるけど、ぜったい日本を守ろう。』とか、『日本を守ってください。』、『よろしくお願いします!』とか、幼子が声を揃えて言っていました。この幼稚園の理事長との問答のやり取りを、このご夫人の前でしていたわけです。

 私は幼稚園にも行けないで、ハナたれ小僧で、悪戯に目覚めていた年齢の時には、まだ字も習っていませんし、野山を、兄たちの後について駆けまわっていました。この幼稚園の園児の口から出ていた、「国防」などについては何の知識もありませんでした。ちょうど「警察予備隊(今の自衛隊の前身でした)」が誕生したニュースがラジオや新聞が、仕切りに報道していた時代に、幼児期を過ごしていたのですが、大人の世界などには全く関心がありませんでした。

 それなのに、この園児たちは、黄色い嘴(くちばし)で、「国防問題」を語り、政府の責任者がする仕事に感謝やお願いまでしていたのです。それが幼稚園児がでしたから、驚きました。でも、この問答は、すでに、このご夫人の訪問前に、練習済みだったに違いありません。その理事長という人が、『中国から、何? 言って!』と園児に応答を求めていました。また、『「日本を守ってください、お願いします」と、◯◯夫人にきちんと伝えてください!』と園児に求めていて、それに園児たちが呼応していたのです。

 何だか、昔の予科練の教場でなされている、教官と練習生とのやり取りが、こんな風だったのではないかと思った次第です。聞くところによりますと、この幼稚園では、「教育勅語」を覚えさせているのだそうです。

 第一高等中学校(現在の東京大学の前身です)の教師をしていた内村鑑三が、これを聞いたら、たまげてしまうに違いありません。これを聞いていたご夫人は涙ぐんでおいででした。国政の要職に、自分の主人がついているのですから、こんなことを園児の口から聞いたら、自然と、そうなるのでしょうか。

 戦争を知らない世代の大人が、こんなことを幼児に言わせている、「愛国教育」に驚いたのです。このご夫人とご主人とに、「よいしょ」をしているように聞こえて、不愉快でした。私には孫が四人いますが、尊敬や礼節は教えていただきたいのです。でも、こんなことを言わせて欲しいとは、全く願いませんでした。もちろん日夜、国政に預かって、国の舵取りをしている方々に、感謝できる子にもなってもらいたい思いはあります。

 私は、生まれた村、学び育った町、社会人として仕事をした街街を、また、そこで出会った人々、また、した仕事を懐かしく思い出すことがあります。戦後の荒廃の中から、父たちの世代が、国を復興させたこと、そして平和を享受できる国造りをしてくださったから、それらを受けることができたのです。ですから深く感謝しています。そして、こんな日本が大好きです。私を育て、守り、寛がせてくれたからです。でも、この守りが昂じると、いつか攻撃的になっていくので危険です。

 でも、妻や子や孫を、守ろうとする思いはあります。おめおめ暴漢に傷つけられたり、殺されるのを、黙って見ていようとは思いません。拳や剣を取らなけれが、守れないなら、それらを取って、彼らを守ろうと思いながら、子育てをしました。これって真の民主主義を学んだ者の究極の決断と選びなのでしょう。でも、過剰防衛になってはいけないと思っていたのです。

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