城下町

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 悔しいほどスッキリ爽快な同年生まれの好青年、梶光夫が、「青春の城下町」を歌っていました。1964年、オリンピックの東京大会が開催された年でした。作詞は西沢爽、作曲は遠藤実でした。

流れる雲よ 城山に
のぼれば見える 君の家
灯りが窓に ともるまで
見つめていたっけ 逢いたくて
ああ 青春の 思い出は
わが ふるさとの 城下町

白壁坂道 武家屋敷
はじめてふれた ほそい指
ひとつちがいの 君だけど
矢羽根の袂が 可愛いくて
ああ 青春の 思い出は
わが ふるさとの 城下町

どこへも 誰にも 嫁(い)かないと
誓ってくれた 君だもの
故郷に 僕が 帰る日を
待っておくれよ 天守閣
ああ 青春の 思い出は
わが ふるさとの 城下町

 山奥の村で生まれ育ったからでしょうか、自然要塞は堅固で安全極まりないものだと思っていました。里に降りた街には、城跡がありました。江戸城(皇居)は見ていましたが、下の息子と訪ねた木曽川の河畔に、国宝の指定を受けた、「犬山城」を見た時、その天守閣の原型を留めている城として、一番注目されていましたから、実に素晴らしい眺めに圧倒されてしまいました。

 室町時代の天文6年(1537年)に建てられ、天守は現存する日本最古の様式です。木曽の流れのほとりの小高い山の上にあって、天守最上階からの眺めは素晴らしいものがありました。織田信長の叔父の居城であったのですが、名古屋城や姫路城の様な巨大な城に比べると、小さくて見劣りがしますが、立ち様は威厳がありました。

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 子育てをした街の子ども会で、バスに乗って訪ねたのです。「明治村」に行ったついででしたが、遊びよりも、日本の歴史に触れることができて、素晴らしい時でした。下の息子と出かけたのですが、別の時には、「小田原城」にも一緒に行きました。北条氏の居城で、武田信玄の攻撃にも、じっと耐え抜いた城だった様です。

 そびえる様な天守閣の威容は、藩主の権勢を誇っているのですが、姫路城、松本城、熊本城、そして犬山城は、どこも美しいのです。二度登った天守閣は、加藤清正の築城で有名な、熊本城でした。天守閣から眺める阿蘇の山並みも、熊本の街並みも実に美しかったのです。

 この歌詞にある、「矢羽根の袂」を揺らす君と、城下町が似合いますね。歌のmodel になったのは、岐阜県揖斐川町の「藤橋城」とのことです。「青春の思い出」も、楽しいことよりも苦くて辛かったことが、私には多かったのですが、でも「希望」が、心の中に広がっていました。父や母に愛されて育った確信があって、何があっても挫けることはありませんでした。「青春の蹉跌(さてつ)」も経験しましたが、後になって益になったことでした。