微笑みながら

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 「しかし、あなたは私を母の胎から取り出した方。母の乳房に拠り頼ませた方。    生まれる前から、私はあなたに、ゆだねられました。母の胎内にいた時から、あなたは私の神です。 (詩篇29節、2210)

 詩篇の記者は、私たちの誕生までの一切を定めた方こそ、万物の創造者だと告白しました。命の保持者も、この神さまなのです。生命誕生の神秘さは、私たちを驚かせます。

 戦時下、中部山岳の山奥で、母は、3人目の男の子の出産で、私を産んでくれました。十ヶ月の間、母胎に私を宿し、祈りつつ、私を主に委ねて過ごしています。真冬の間借りして住んでいた旅籠の別棟で産んでくれたのです。

 朝4時45分の出産だったと、父が記録をメモ帳に残してくれました。宮本村の村長夫人が産婆をして、産湯につけてくれたそうです。エアコンも電気ヒーターもない時代、寒かったことでしょう。二年後、同じ様にして弟も生まれています。

 「彼女は力と気品を身につけ、ほほえみながら後の日を待つ。
彼女は口を開いて知恵深く語り、その舌には恵みのおしえがある。
彼女は家族の様子をよく見張り、怠惰のパンを食べない。その子たちは立ち上がって、彼女を幸いな者と言い、夫も彼女をほめたたえて言う。『しっかりしたことをする女は多いけれど、あなたはそのすべてにまさっている』と。(箴言31章25~29節)」

 それから、結婚するまで、母の手で世話されて、私たち四人は過ごしたわけです。九十五年の生涯を終えて、命の付与者の元に帰って行きました。

 結婚した私の家内も、同じく四人の子を産んで、育ててくれました。母への感謝は尽きません。

 

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