天来の守り

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 植物学者のメンデル(1822年7月20日〜1884年1月6日)が、エンドウ豆の実験で、「遺伝の法則(メンデルの法則)」を発見したということを教わったのは、小学生の時でした。簡単に言うと、《子は親に似る》との結論です。動物も植物も、そして人も、そう言えます。父の几帳面さを、受け継いだ、二人の兄と弟に比べて、自分は乱雑な傾向にあります。私たちの四人の子に当てはめると、彼らの良い点は母親似で、良くない点は自分に似ている様です。

 自然界には、多様性があって、人間も多様です。同じ親から生まれながら、顔貌はともかく、性格や生き方の良さを受け継がなかった自分を意識しつつ生きてきました。今朝も、家内が華南の街で、日本語を教えていた生徒から頂いた、綺麗な「夫婦茶碗」に、ヨーグルト、バナナ、干し葡萄を入れて、食卓に運ぼうとして、私の分を落として割ってしまったのです。家内は、『形ある物は壊れるわ!』と言ってくれたのですが、申し訳ないことをしてしまいました。

 人の内には、「遺伝情報」が組み込まれてあったことが、分かったのは、このメンデルが「遺伝子」の存在を発見してからです。親の写し絵の様な遺伝を受け継いで、私たちがあるわけです。何年も前からから、“ DNA ” を受け継いでいることが言われ始め、亡くなった方がだれかを特定するために、その方の髪の毛、使っていた歯ブラシなどから“ DNA検査 ” が行われる様になりました。確かな精度で特定されています。

 科学や学問とかの研究で、その“ DNA ” の存在がはっきりする以前から、その「遺伝情報」が、私たちの内側に組み込まれていたと言うのは、とても神秘的です。誕生した時に、そう言ったものを受け継いでいると言う驚きなのです。
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 東日本大震災が起こった時、私たちは、東京郊外の長男の家におりました。それに伴って発生しました「福島原発事故」の報道ニュースが、にぎやかに放映されていました。その後、次男の家で家内と三人で、「学べるニュース~生放送3時間~(tv asahi)」の番組を観ていたのです。この番組に、東京工業大学の原子炉工学研究所准教授の松本義久さんが出演されておいででした。

 長男と同世代の研究者ですが、私たち素人に、チンプンカンプンな専門的な話をされるのかと思って、耳を傾けていましたが、話しぶりは巧者ではありませんが、平易な言葉で、私たちが理解できるように話されており、つい聞き入ってしまったのです。松本准教授が、番組のおしまいに、この放射能汚染の危機のただ中で、大きく揺れ動く東日本の窮状のただ中で、『《お守り》があるんです!』と言われました。

 『今回の一連の流れの中で、2つの放射能があるんです。1つは、《本当にこわい放射能》、もう1つは、《本当は怖くない放射能》です・・・』と話されたのです。『この《本当に怖い放射能》に立ち向かいながら、この事態を収束させようと頑張っていらっしゃる働くレスキュー隊のみなさんには、ほんとうに敬意を表します。』と謝辞を述べておいででした。

 日本存続を大きく左右する現場で、放射能の汚染に冒される危険を顧みずに、一命を賭して働かれていらっしゃるみなさんへの感謝こそ、この未曾有の国家的危機を脱するために、私たちのできることだと知らされたのです。今も、コロナ感染で収集のつかない状況下で、危険を顧みないで、医療と防疫などの面で、日夜、働いておられる方々がおいでです。

 震災後、政府の対応の稚拙さ、東電の周章狼狽ぶり、福島県民の怒りと戸惑い、近隣の都県の住民の恐怖、世界中が声を上げている放射能汚染の影響、報道ニュースは、次から次へと伝えていましたが、《事故現場》だけに、解決の要諦があります。『税金の無駄遣いだ!』、『憲法違反だ!』と揶揄避難されてきた自衛隊の隊員のみなさんの雄々しく危機に立ち向かい介入される姿に、背筋の伸びる思いをさせられたのが昨日の様です。
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 今回の熊本や福岡や岐阜や長野などでの集中豪雨による河川の決壊、洪水の中、警察官、消防隊員、下請け企業みなさん、ボランティアのみなさんが、最前線に立って怯(ひる)まない姿こそ、まさに《益荒男(ますらお)》そのものではないでしょうか。ただ、コロナ禍の中で、県をまたいだボランティアが要請できないと言う事態が持ち上がっています。

 でも恐れたり、不安にならないでいいのです。もちろん現代人に必要なのは、傲慢さを悔い改めることなのかも知れません。謙虚になって、生きている意味を知る必要がありそうです。どの時代の疫病の流行も、やがて弱体化し収束してきました。私たち人類は、多くの危機を超え6000年の間生き続けてきました。造物主に憐みによるのでしょう。

 私たち人間の内側には、《天来の祝福》が宿っているのではないでしょうか。松本さんは、日本人の受け継いできたDNA(遺伝子)についても触れていました。『・・・恐れるあまりに大事なものを失ってきている・・・これだけは伝えたいと思います。私たちの体は、放射線から守る、すごい《お守り》を持っているんです。それが遺伝子・DNAなんです!』とです。

 この《お守り》について次の様に説明されています。

 『私たちの体は放射線から守る『お守り』を持っています。それが放射線で影響を受ける遺伝子DNAです。30数億年の生命の歴史の中で直面してきたありとあらゆく緊急事態を切り抜けた、切り抜け方を書いてある想定不能という言葉を持たない究極の緊急事態マニュアルです。それと放射線に立ち向かって行くお父さん・お母さんから受け継いで子供たちに受け継いでいくんです。僕たちみんながつながっているんです。どこかで。みんなが頑張ってくれと言っているつながりを確かに示す《お守り》なんです。』

 否定的なことにだけ目を向けて、慌てふためいている日本人に、『だいじょうぶ、恐れるな!慌てるな!落ち着け!』と肯定的なとらえ方を訴えておられました。この科学者というよりは哲学者のような勧めに、私は同意します。戦いの前線で、働いてくださるみなさんが大勢いることにも行って感謝したいのです。

 父や母、祖父や祖母たちは、幾多の困難や危機を超えて、この素晴らしい国土を、そして地球を守り残してきてくれたのですから。何よりも、造物主の《憐憫と恩寵》、全地の統治者からいただくことのできる、人知を超越した《天来の知恵》を信じたいのです。

(日テレの報道写真の人吉の豪雨、東日本大震災で救援にきてくれた中国の救援隊です)

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