車軸

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「車軸を流す」とは、"車軸のような太い雨脚の雨が降る。大雨の降るようすをいう。車軸を降らす。車軸をくだす。「雨―・すがごとく切子かな/万太郎」" と、goo辞典にあります。昨夕、軍の病院に入院中の知人をお見舞いしようと、出掛けました。行先の空に、真っ黒な雲が広がってきて、『雷雨になりそう!』と思ったら、病院に着く頃に、パラパラと降り始めたのです。

病室に上がって、肺の病気で治療中の知人は、意識が朦朧とされておいででしたが、耳元に口を当てて、呼びかける声に、頷いておられました。実は、奥様も、市内の他の病院に入院中で、ご夫婦で病を得て、もう2、3年になるでしょうか。お嬢様がオーストラリアに留学された後、北京でお仕事をされていて、看護ができずにいて、親戚のみなさんや、入院中の世話をしてくださる方を雇ったりして、介護おられるのです。

しばらく病室で、ご一緒に過ごしてから、回復を願って、そこを辞しました。玄関から車までの間は、小降りでしたが、大通りに出ましたら、まさに、その「車軸を流すような雨」が、強烈に車を叩きつけ、またたく間に、道路が川のようになってしまったのです。車を減速せざるをえないほど、視界が見えにくくなってしまったのです。

私は、こう言った雨が好きなのです。靴やシャツを脱いで、雨の中に飛び出したいほどなのです。人の目もありますし、何よりも年寄りですから、そんな軽率な行動はできかねたのです。でも気持ちははやるのです。まあ、やっとの事で我慢していました。間も無くわが家のある小区に着き、運転くださった知人を家に招いて、一緒に食事をしたのです。

雷鳴や轟は、激しくなく、《雷雨》と言って好いのでしょうか、強雨、暴雨、豪雨なのです。車の中で感じた雨の強さは、今までの雨に遭った中で、最強でした。この時期、雨傘を持たずに出てしまって、家の近くでしばらく車中で過ごしてしまいました。舗装以前の道路でしたら、馬のひずめの跡や、牛舎馬車の轍(わだち)の跡を、消してしまうような雨脚でした。

こう言った雨の降り方を、「どう降り」と言うそうです。同じ辞書に、"雨が勢いよく降ること。どしゃぶり。 「降出して来ました雨は、-で、車軸を流す様で/真景累ヶ淵 円朝」"とありました。こんな雨、雷雨も雷光も雷鳴の様に、型破りに大きく、激しく、強いのに出遭うと、『ああ中国大陸にいるのだなあ!』と思わされてしまいます。

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