小学校の校庭の隅に、白く塗られた木箱がありました。みなさんもご記憶があることでしょう。そうです、「百葉箱(ひゃくようそう)」と呼ばれていました。気温を測定する温度計や湿度計が入れられてあったのです。「理科」の授業で観察をした覚えがあります。『今日の天気は36度でした!』という温度は、この「百葉箱」の中の温度計が記録したものであります。中国でもアメリカでも、どこでも同じ形式で観測されているのだと思います。最近のこちらの最高気温は、連日37度で、最低気温は27度を予報されています。わが家には、温度計が二箇所においてあります。一つは時計の中に組み込まれているもの、もう一つは、壁にかけた、赤い液がガラス管に入っているおなじみの気温計です。
今年は、『異常に暑い!』と感じていましたが、今日のニュースを見ましたら、アメリカでは50度を記録しており、『アリゾナ州のフェニックスでも48度を記録した!』と報じていました。「猛暑」、「酷暑」に違いありません。来月、明日からですが、この月は年間で最も平均気温の高い月になりますから、どれほどの気温になることかと気が気でなりません。この公表される温度と、「体感温度」とは違っていて、アスファルトの上で、カンカンに陽が射してしている箇所などは、5度も6度も高いのではないでしょうか。
そんなことを考えていましたら、「打ち水」とか「夕立」、「浴衣(ゆかた)」とか「風鈴」という言葉を思い出したのです。思っただけで、聞いたり話たりするだけで、涼しさを感じさせてくれるようです。こんな俳句を見つけました。
打ち水や塀にひろがる雲の峯 鬼城
夕立やけろりと立ちし女郎花(おみなえし) 一茶
果物の汁の飛びたる浴衣かな 普羅
風鈴に大きな月のかかりけり 虚子
お読みになられて、少しは涼しさを感じてくださったでしょうか。スイカが食べたくなったり、行水(ぎょうずい)をしたくなったり、故郷の小川のせせらぎに飛び込んでみたくなったりしてしまいます。先日、腰痛の私のためにお見舞いに来てくださった友人が、中国の華南地方の夏の特産である「ライチ(茘枝〈れいし〉 広東語では〈ライチー〉」を、たくさん持ってきてくれました。冷蔵庫に入れてあるのを出しては、すこしずつ食べていますが、『夏の果物としては最高!』だと思います。こんな素晴らしい涼の取れる果物があるのは、造物主のご配慮でしょうか。
子供の頃に食べたスイカ、マクワウリなども思い出されます。今のように遠い地方の産物が運送されてくることがない時代でしたから、「地物」でした。紐で解けないように縛って、井戸の中に吊るしたりしましたが、滑り落ちてしまった、あのスイカがどうなったのでしょうか。その井戸の水を飲み続けたのですが、今の水道水よりは遥かに美味しかったのです。みんな美味しくて、懐かしい味が蘇ってくるようです。暑さにめげないように気を引き締めている今宵、冷えた「ライチ」をつまもうと思う、夕餉(ゆうげ)の後であります。
(写真は、南国の特産「ライチ」です)