「車譲人」

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「月」

 我家のベランダから見える、今晩の「月」は、まん丸で大きいのです(スーパームーンというんだそうです)。まるで「中秋の名月」のような輝きを見せています。隣のアパート群の高層ビルの陰から出てきて、煌々と輝いています。先ほど眺めていたのですが、その月光を浴びて、家族でそぞろ歩く姿が何組もみられるのです。真夏の日曜日の宵ですから、夕涼みに出てきたのでしょうか。なんとも言えないノンビリムードもあふれています。こういうのを「月光値千金(げっこうあたいせんきん)」と言っていいのでしょうか。

 我家のベランダの下は、バス通りで、ちょうど真下で《T字路》になっているのです。月から目を落として、交差点を見ますと、信号が設置されているのですが、ほとんど守られていません。タクシー、砂利や建物の廃材などを運ぶ大型トラックの90%は守っていないのです。公共バスも、たまに守っているバスがあるくらいでしょうか。守っている車には、後続車が、クラクションを鳴らして、『進め!』と煽っているほどです。実は、信号がない方が事故の起きる確率が低いのではないかと思うのです。先日も、電動自転車同士がぶつかって、交差点の真ん中で、大声で原因や責任のやり取りをしている光景が見られました。『いつか大事故が起きないといいのだけど!』と思って、ハラハラしております。

 日本では、車が通らないのに、赤信号で立ち止まって信号が変わるのを待っている光景が、普通に見られるのですが、中国のみなさんには信じられない光景ではないでしょうか。天津にいました時に、道路のどこででも渡ってしまう様子を見ていて、『この国には交通ルールがないのかしら?』と思っていたのですが、語学学校の一階のロビーに、印刷の色の薄れてしまった《交通ルール表》が掲げてあったのを見て、『守らないけど、あるんだ!』と思ったのです。最近聞いた話しですが、歩行者で信号を守らないと、《10元の罰金》を取られるようになったのだそうです。きっと、10元紙幣を持っていなくて、20元紙幣しかなかったら、『お巡りさん、もう一回分違反しましょう!』というのではないでしょうか。

 年配者の私たちにとっては、由々しき問題ですから、《法律遵守》をして欲しいと思うことしきりです。『道路は歩行者のもの!』と思っていたのに、この数年急激に車が増え始めて、『道路は車のもの!』という主張が強くなってきているのでしょう。信号のないところを渡らなければならない家内は、ほとんどの時に、躊躇して《二の足》を踏んでいるのです。『日本の小学生のように、手を上げて渡ったら!』というと、『タクシーが停まってしまうからダメ!』と言っています。それでも、道路には、「車譲人」と書きこまれているのです。つまり、『車は人に譲りなさい(歩行者優先)!』ということですが、譲っている光景は、1週間に数度目にするほどです。

 そういえば、50年前の日本だって、《信号無視》が多く見られていましたね。東京オリンピックの後から、守られうようになってきたのではないでしょうか。先年、北京オリンピックがありましたから、こちらでも、『間もなく変わるにちがいない!』と期待している、「満月の宵」であります。

(写真は、地表に近い「月」です)

孫ベー

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「高校野球(日本)」

 子どもちが小学校のころ、《スポ少(スポーツ少年団)》という活動が、活発に行われていました。野球、ミニバスケットボール、サッカーなどが人気があったのです。放課後や週末に練習が行われていました。小学校の校庭や体育館を利用し、学校関係者の指導員によって運営されていたのです。ですから「校外活動」で、『やってみたい!』子どもたちが参加していました。とくにお母さんたちが熱心だったのを思い出します。日曜日に、対抗試合などがあると、子どもたちの食べ物やお菓子や飲み物を差し入れていました。また試合の後の「祝勝会(負けたときは反省会)」が、定例のように行われていたのです。

 娘や息子が、小学生の頃にやっていたミニバスのコーチを、少しの期間でしたが、やったことがあったのです。大人の熱心さが、子どもたちを奮い立たせていましたので、何となく日本的な感じのする活動だったようです。昨日、孫(中国語では外孫子というようですが)の野球の動画が送られてきました。バッターボックスに入った孫ベーが、ヒットを放ったものでした。娘が、”Good Job”と、彼に声をかけていました。ものの10秒ほどの動画でしたが、攻撃側も守備側も、みんなが、本当に楽しそうにプレーしている様子が映し出されていました。少し前に、サッカーの試合のスナップ写真が送信されてきましたが、これも同じように、楽しそうなのです。

 ミニバスでも野球でも、日本のスポーツは、やってる本人たちは「大好き」ですし、大人たちも「喜んでいる」のですが、今ひとつ、「楽しい」雰囲気が欠けているのです。怒られることが多くて、ほめられることが少ないのです。それは大人のスポーツも、同じなのです。プレッシャーをかけられて、負けてしまうと悲惨で、みんなが意気消沈してしまうわけです。ところが、スポーツの本場アメリカは、一年中、野球だけ、サッカーだけといったクラブ活動ではないのです。サッカーのシーズンがあって、それが終わると今度は野球のシーズンに入り、大学生などのコーチがついて、指導するわけです。私の孫ベーも、先月は「サッカー」をやっていましたが、今は「野球」、もう少したって秋になると、「アメリカンフットボール(タッチフット)」をやるのです。まだ、小学校の低学年ですが、大きな子たちの間に混じって、実に楽しそうなのです。彼のプレーを、写真や動画で見ていますと、『カ―ッ!』と力が入ってしまうのは、《爺似》なのでしょうか、燃えて夢中になってしまうようです。

 一年中、一つの種目しかしない日本の子どもたちのスポーツと違って、あちらでは、何種類のものスポーツを、《シーズン制》で行なっているのは、バランスがあって、とても好いことだと思うのです。バスケットの有名プロ選手のマイケル・ジョーダンが、しばらくプロ野球の選手をしていた時期があったのを覚えています。日本のプロ野球の選手で、サッカーもラグビーも出来る選手は少ないのです。もちろん中学や高校時代に、他の競技をしていた人はいるようですが。

 いつですか、送信してきた写真で、芝生の競技場の上で、大きな子たちに孫ベーが囲まれて、『お説教されたり、怒られてるのかな?』と思った私は、娘に、『何の場面?』と聞いたのです。そうしたら、『彼が小さくて、まだアメフトのルールがわからないから、大きな子たちが説明してるの!』と言ってきました。それで納得したわけです。われわれの時代は、上級生に殴られたのを思い出し、『なんと和やかなのだろうか!』と思ってみています。もう夏休みに入ったそうです。4人の孫ベーの無事と成長を、この地の空の下から願っています。

(写真は、日本の高校野球のシーンです)