一封信(便り)

 ◯◯◯さん

 もう故郷に帰っておいででしょうか。◯◯は、海の近くですから、きっと朝晩は涼しくしのぎやすい土地なのでしょうね。
 昨日、事務室に、「成績表」を提出しました。私が一番嫌いなことは、学生の評価なのです。誰かにAをつけ、誰かにEをつけるという作業が嫌いなので、教師には向いていないのか知れません。でも提出義務がありましたから、やっとのことで済ませました。
 今学期は、3年生の二教科を教えさせていただき、感じることが多かったのです。07級、08級、09級と教えてきたのですが、今年は、ちょっと迷ったりがっかりしてしまいました。きっと、この3月末に母が召されてしまったこともあったと思いますが、今までに無く心が落ち着きませんでした。
 でもその様な思いの中で、◯◯さんからの激励を感じたのです。一生懸命に聞いてくれている姿は、この大学で教えてから何年か経ちますが、とくに今年は、『頑張れ!』と無言の声を聞いているかのようでした。
 それで、お礼が言いたくて手紙をしたためました。今学期の評価ですが、本当は100点を付けたかったのですが、誰も完璧ではないので、これからも学ぶことが残されているという意味で、満点にはしませんでした。でも、僕の気持ちは、◯◯さんに満点をおくっているつもりです。技術や理解だけではなく、私が責任を任された教室の中での◯◯さんの存在への評価です。
 思わされたり、感じることの多かった今学期でしたが、マイナスなことを一掃してくれるほど、◯◯さんの励ましが大きかったのです。
 ぜひ4年生、最終学年もがんばってください。9月からは、「卒業論文」や「就職」などの課題の多い学年ですが、最善の導きがありますように、心から願っています。
 家内にも、あなたのを読んでもらったり、試験も答案用紙を見てもらったりしました。彼女も、あなたへの評価がずいぶんと高いと思います。これを激励に、これからの人生をがんばってください。陰ながら応援しています。
 今年は、遼寧省と内蒙古を旅行しようと思っています。その後、来学期の準備などで、日本に帰ろうかと思います。家内はこちらで用があるので、残ると言っていますが、もしかしたら、どこかにに行くかも知れません。
 夏休みは何をされるのですか。◯◯は、◯◯に行った時に通過しただけですが、内陸部に畑が散在していて、南国のようでした。海も綺麗なのでしょうね。何時か、◯◯さんを育てた◯◯には、行ってみたいなと思っています。         
 好い夏期休暇をお過ごしください。
 お父様やお母様にも、僕が励まされた経緯をくれぐれもよろしくお伝え下さい。
 失礼します。 
                    2012年6月26日

(写真は、華南の海の夕べの風景です)