今、「移住」を考えている最中です。こう考えることが、これまでしばしばありました。きっと逃亡癖や漂泊癖があるのかも知れません。どこへかと言いますと、ハワイでもモンタナでもハイデルベルクでもなく、「シンガポール」なのです。なぜだか分かりますか。美味しい小龍包があるからでも、実演麺作りの蘭州拉麺があるからでも、何百種と言う花の咲く蘭園があるからでも、波風を頬に感じながら食べる美味な伊勢海老があるからでもないのです。
長女が10年も仕事で住んでいたシンガポールに、何度も呼ばれて訪ねたことがありました。仕事と任地を離れさせてくれたのです。わたしたちは、学期終了後の夏季休暇や正月休暇に、中国の華南の街から飛行機に乗って、意気揚々としてチャンギ空港に降り立つと、同じ中華文化圏であるのですが、明るさと清々しさ、そして自由を感じて、その違いに驚かされた訪問だったのです。
もうバスに乗って、市内を動く回ることができるようになるほどでした。習い覚えた中国語が通じるのも、便利でした。お隣のジョホウルバール(マレーシア)に連れて行ってもらって、滞在期間の延長までしていた時もありました。赤道直下の街なのに、とても気に入っていたのですが、それが、移住の動機ではないのです。
この街に、〈いないもの〉があるからなのです。〈いない〉のは「蚊」です。〈ある〉のは「蚊」を発生させない国の厳しい「蚊対策」なのです。10月に入って、気温が下がってきたので、テント式の蚊帳を畳んで仕舞ったら、先日、2日連続で隠れていた残留兵の「蚊」に刺され、ある晩は5箇所も刺されてしまいました。
刺すのはメスの蚊で、刺されるのはオスの人間なのだそうです。この蚊は、1ヶ月も長生きするものがあるようです。それで、10時近くになっていましたが、押入れから出してきて、簡易蚊帳(中華製なのです!)を開いて、セットしてしまったのです。ホット安心して横になったら、その「移住」を考えてしまったわけです。それには、シンガポールが一番最適だと、秋深くなってきた今頃に考え付いたわけです。
寒さも暑さも、問題なく生活できるのですが、この「蚊」は、まさに天敵なのです。玄関に、買った蚊退治の新製品をかけてあってもだめ、蚊取り線香を焚いてもだめなのです。厚生労働省に、「蚊対策庁」を設けて、撲滅対策を国を挙げて講じて欲しいと思い続けているところです。
国から、いえ納めた税金から戻ってくる10万円とか5万円の援助よりも、蚊撲滅対策を優先して欲しいのです。今度、ここから選出された国会議員に会いましたら、提言したいと思っているところなのでもあります。
そのシンガポールでは、果物の王様の「ドリアン」が、隣のタイから輸入されて、「榴莲liulian市場」で安く売られていて、美味しくて、たくさんで、わたしを惹きけてやまなかったのです。もしかすると、蚊から逃れるためではなく、美味しくドリアンを思いっきり食べたくなったからかも知れません。ここには、果物の女王様もあるのです。
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