小さな絵ですが、どこで入手したか覚えていなのですが、強烈な印象を受けた一枚です。還暦を過ぎて、みなさんが引退される時期に、家内の手を取って、人生の双六の上がりをするような気持ちで、2006年に香港に行きました。中国語を本場で学び、学んでいる間に、上がりの道すじが開けると信じてでした。
その香港の樹木の茂る閑静な施設で、1週間後には、香港九龍駅から寝台列車で北京に行くまでの間過ごしたのです。真夏の8月のことでした。中国での volunteer 活動を志すみなさんが集まっていました。世界のいろいろな国から来ていたのです。スイス、ブラジル、イギリス、カナダ、アメリカなどからで、ほとんどが若い方々で、家内と私が一番の年長でした。
美味しいイギリス風香港料理の賄いを受け、とても好い静かな時を過ごすことができました。長女が休暇をとって、英語のおぼつかない私たちのために、通訳の労をとってくれたのです。『心の中にあることを分かち合ってください!』と、事務局の方に言われて、聖書から1時間ほど、長女の通訳でお話をしましたら、イギリスから来ておられた夫妻に、感謝の握手を求められました。
彼らは、雲南省の昆明(Kūnmíng)に直接行かれ、私たちは北京に向かったのです。その他には、青海省や黒竜江省などに、やがて行くことになる若いみなさんがいました。あの日から16年の歳月が過ぎました。まだ元気が旺盛で、歳には見られず、実際の歳を答えると驚かれていました。そして、さらに歳を重ねた今、北関東の栃木に住んで、越し方を思い返しているのです。
江雪 柳 宗元
千山鳥飛絶
万径人蹤滅
孤舟蓑笠翁
独釣寒江雪
この絵は、「孤舟(こしゅう)」と呼べるでしょうか。この船頭さんは、どこに向かっていたのでしょうか。にぎやかな子育て時代を終えて、自分を見つめ直したり、人生の上がりのために、環境を変えて静かに過ごしたかったからではないと、あの時を思い返しています。その気分に、この舟の絵が似通(にかよ)っていたのです。
実際は、キャセイ航空機で行ったのですが、気分は、「孤舟」に乗って、新しい地に漕ぎ進んでいたようです。自分で櫓を漕いでも、人生を導かれる神さまが、荒れた海をしずめて、背中を押されて進むようにして、歩み始め、ここにたどり着いたのです。未知の大南原を、自分一人で懸命に漕いでいるように感じても、追い風を受け、手を引かれるようにして、今日まで生きてきました。
見守られ、声援を送られ、激励され、天からの送りで生きて今日あるのは、ただ「恩寵」なのです。どこに進んで行くのでしょうか。これからの日々にも、新しい驚きの出会いや出来事が待っていることでしょう。38度の酷暑の日の昨夜、雷光が光り、雷鳴が響き渡って、雷雨が強烈に降っていました。水かさが少なくなった巴波川に、雨水が注がれ込んで、流れがイキイキとした朝です。
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