立秋

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 「黄河」の中流から下流あたりを、誇り高い「黄河文明」の中心という意味が込められている、「中原(ちゅうげん)」と呼んで、中華文明の発祥地だとされています。河南省の鄭州市辺りを言うのでしょう。

 その地域の気候の一年の太陽の動き、移り変わりを、「二十四節気(にじゅうしせっき)」に区分し、今日は八月七日は、「立秋」です。こんなに暑いのに、暦の上では、「立秋」だと聞きますと、季節感が狂ってしまってる様ですが、それでも、先日は赤とんぼが飛んでいましたし、着実に「秋」が、そこまで来ているのでしょう。

 黄河下流域と私たち日本、北から南に長い列島の中で、気候は随分と違いがありますし、今夏など、旭川や帯広、新潟など、思っても見ない街で、高温を記録しているチグハグさを感じてしまう、最近の気象です。

 秋風の 吹のこしてや 鶏頭(けいとう)花 与謝蕪村

 まだ、この暑さでは、物悲しさを感じることも、書を読もうとも思わないのですが、暑いからこそ、ソヨソヨと吹く秋風を心待ちしたい願いが湧いてくるのかも知れません。

 伝え聞くニュースによると、私たちが長く住んだ華南の街の近くでも、大雨で洪水が出たとのことです。開発が、ものすごい勢いで進んで、自然体系が破壊されてしまったことも、大雨の自然的な原因と共に考えられそうです。

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 東南アジアやブラジルのアマゾンの森林伐採によって、気象の均衡が崩れて、異常気象の元凶になっていると聞きます。創造の世界は、創造者の意図によって定められているのに、人為的な手を加えてしまったことによって起こるのだそうです。

 そう言えば、子どもの頃には、扇風機もエアコンもなく、氷屋さんで縄で結えて買ってきた氷を、母が、氷砕きでかいて、シロップや梅酒を入れて、飲ましてくれたり、肉屋で〈ボンボン(ゴムの袋で凍らせたキャンディー)を買って咥えたりして、団扇で涼を摂っただけでした。ところが今は、ブンブンと室外機が回って、26、7℃の室温の中にいるのですから、自然を虐めている様でなりません。

 先ほども、出先で大雨に遭ってしまい、駆け込んだスーパーの eat-incorner  で、熱いコーヒーを飲んできました。ice coffee でない贅沢を楽しんでしまったわけです。こんなチグハグな生活で、身体はついていけるのかどうか、ちょっと心配でなりません。今頃を、「涼風至(すずかぜいたる) 87日頃」と気取って言うのだそうです。

(ケイトウの花、中国の中原です)

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科学者と預言者

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 科学者の発言、科学的な思考が、どの様なものかが分かるのが、尾身会長の発言に見られるのかなと思うのです。その時や、場所や、機会によって変わってしまう「感覚」に頼らないで、集められた事実から、結論を出そうとしている思考法です。しかもとても単純なのです。

 ちなみに、毎日新聞は、次の様に言っています。

 『政府の有識者会議「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長が16日に記者会見し、開会を1週間後に控えた東京オリンピックの応援は自宅で家族などとし、路上や飲食店などで大人数で応援しないよう国民に求める談話を発表した。尾身会長は「7月から8月下旬にかけての2カ月は、4連休、夏季休暇、お盆、オリンピック・パラリンピックなどが集中するため、1年以上の新型コロナウイルスとの闘いにおいて、正に山場だ。山場を乗り越えるためには、緊急事態宣言の期間中に感染拡大を少しでも抑えることが求められる」と訴えた(2021/7/16 17:51)』

 こう難しい理論を隠して、単純に言われる背景は、『情報通信技術(ICT)を使った疫学調査など科学技術の重要性から』であると、尾美会長は言っています。だから、この勧めを、「理解してほしい」と願っています。それは人間を知っているかどうかにあるのでしょう。優れた能力と、弱さもろさを、人は併せ持っていることです。もし謙遜に、自分の限界を認めるなら、驚くほどの知恵が与えられるのではないでしょうか。

 ガリレオ・ガリレイが、宗教的な、神学的な、政治的な立場で、天動説を押し通され、彼の「地動説」を異端審問にかけられて有罪を宣告された時、『それでも(地球は)動く!』と独り語を語った様に、事実を人間の都合で変える様なことはしないのです。事実は、感染者の数で歴然とされている今を起点に、これから将来の展望を語れるのです。大きな問題になる以前から言っていたのに、政治的な立場の人たちは、聞こうとしなかったのです。

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 尾身さんは、次の様に言っています。

 『私の専門は、公衆衛生という分野です。個人と向き合う臨床とは違い、社会全体の健康を考え、政策提言などをするのが仕事で、感染症の予防から、公害対策、食品衛生や環境汚染まで扱っています。』と、しっかり医学を学んで、問題意識を持ちながら公衆衛生の分野で生きてこられたのです。

 新型コロナの感染問題を、広角的に観ることができる姿勢と能力を、この科学者は身に着けているのです。ことの本質を見つけ出し、そこから派生することごとを、冷静に観察することが、科学者にはできるのです。そうすると科学的根拠があって、想像力が活発化して、直感が働くのでしょう。

 栃木県下に、自治省が設立した、「自治医科大学」が、宇都宮線(東北本線)の沿線にあります。その第一期生で、卒業生が尾身会長です。尾身茂氏は、「わが歩みし精神医学の道(内村祐之著/みすず書房/1968年刊道)」を読んで医学の道に方向を変えた人でした。この内村祐之は、内村鑑三の子でした。

 その時代、その時代に必要な Message を、預言者の様にして語る器を、神さまは備え、遣わされるに違いありません。危機的な状況下で、憐み深い神さまは、人に託す言葉や知恵を、こう言った器に授けられるのです。その声に、謙虚に聞くなら、早期にコロナ問題の解決を得ることができることでしょう。はっきりものが言えるのは、科学者が事実の上に立って物事を見定めてるからなのでしょう。預言者は、権威に阿(おもね)らないからです。

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