あかぎれ

 

 

〈お涙頂戴〉ではありませんので、念のため。結構厳しい寒さを、ここ栃木で経験したからでしょうか。または、炊事の機会が増えたのでしょうか、娘が駆けつける前に、2人の食事の支度と茶碗洗いや洗濯や掃除で、濡れた手を吹かないままにしたので、〈あかぎれ〉ができてしまいました。

子どもの頃に、冬になるとできた覚えがありますが、もう何十年ぶりの〈あかぎれ〉なのです。その痛痒さが懐かしいのです。作詞が窪田 聡、作曲が窪田 聡の「かあさんの歌」がありました。

1 かあさんは夜なべをして
手ぶくろ編んでくれた
こがらし吹いちゃ つめたかろうて
せっせと編んだだよ
故郷(ふるさと)の便りはとどく
いろりの匂いがした

2 かあさんは麻糸つむぐ
一日つむぐ
おとうは土間(どま)で 藁(わら)うち仕事
おまえもがんばれよ
故郷の冬はさみしい
せめてラジオ聞かせたい

3 かあさんのあかぎれ痛い
生味噌をすりこむ
根雪もとけりゃ もうすぐ春だで
畑が待ってるよ
小川のせせらぎが聞える
なつかしさがしみとおる

お母さんが、〈あかぎれ〉ができた手の甲か指に、生味噌を塗り込んでいます。水道も洗濯機も炊飯器もない、それほどの家事をした時代なのです。4人の子育てで冬季、〈あかぎれ〉のできていた母は、もう亡くなってしまいましたので、自分で、生ミソの代わりに、〈メンターム〉を塗ったのです。

これは近江兄弟社が製造した薬で、小さな頃からの父の家の常備薬だったでしょうか。私の家庭にも、いつも、この薬があり、中国にも持って行き、今回帰国に際しても、持って帰って来ています。

学校を出て、最初の職場の出張で、滋賀県に行き、この近江兄弟社の高校で研修会がありました。校長先生と一緒に食事をしたのですが、実に温和な方だったのです。まるで、〈メンターム〉の様でした。この薬に似た、シンガポール製造の〈タイガーバーム〉を、長男の嫁が持って来て、風呂上がりの私の腰に、長女の指示で、次女が塗ってくれました。ちょっと腰が痛いと、私が言ったからです。

病と戦える《体力》と《気力》の増強こそが、これからの家内の課題なのです。主治医と次男が、ちょっと弱気になっている家内に、そう挑戦してくれました。〈あかぎれ〉ができるほどに、母業や妻業をこなすことなのでしょうか。そんなことで帰国二週が終わろうとしています。なんと、昨日の治療費は、《0円》でした。40分もの主治医の話でしたのに、驚いております。

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ここ栃木の地方紙、「下野新聞」が、いちご生産農家が、基準値以上の農薬を使用したことを、この数日取り上げています。ことの発端は、ダニの発生だった様です。ダニ駆除のために、〈焦って〉しまった農家が、希釈率を無視してしまったと報じています。

私たちが住んできた華南に、農業大学があります。その子大学院で学んでいたり、教師をしている方たちの交わりがあって、品種の改良、農地の土づくり、適地生産物研究、農薬問題などに取り組んでおいでです。

まだ法整備が十分ではないのでしょうか、農薬や肥料などに、そのいちご生産農家の様な、農薬使用の問題があります。生産者の大敵が、天気と水、とくに病害虫ですから、けっこう強い農薬を使用してしまうのだそうです。

形状や色など、目映えの良い農産物を作ろうとして、つい昼問罪などのしようもあるそうです。私たちが三十数年暮らした、日本の中部山岳の街も、農業、とくに果物の生産農家が多くあり、美味しい果物を生産ました。知り合いの農家から、その果物をいただくことも多かったのです。

『これ自家用に食べる気からとったので、低農薬ですから安全です!』と言われていただくのそうしますと、市場に出回っている物は、生産農家では食べない、食べる荷を避けている、農薬の強いもにだということで、ちょっと複雑な気持ちにされたことがありました。

県の農協では、厳しい指導をしていますが、害虫被害で売れなければ、『死活問題になってしまうので!』、という落とし穴があって、より強い農薬使用になるのでしょう。耐性が病害虫にできてしまって、〈鼬(いたち)ごっこ〉になってしまって、ダニとの対決が、〈収入減」との闘いになってしまうのでしょうか。

昔は、「久能さんのいちご」が有名でしたが、今や、栃木県は、いちご生産量日本一を誇っています。主要なのは《とちおとめ》で、とても甘くて美味しいいちごなのです。こちらにきた当初、この家の持ち主で友人が、そのいちごを届けてくださってから、家内の好物になっています。

それで、そのニュースを聞いてから、『これ何処産かしら?』と聞く様になってしまいました。一軒の農家の失態が、県全体のいちごの生産のイメージ、評判を壊しかねない事件だったわけです。汚名挽回に、必死さが伝わってきます。

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