華南の巷、歳末

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 近くの大型商業施設の入り口の広場に、歳末商戦の呼び込みでしょうか、巨大なモニュメントが出来上がりました。樅の木に似せた鉄製の「クリスマスツリー」で、大きめの色つきのボール(中に電球が入っています)がつ吊り下げられています。建物の入口には、サンタクロースがソリを引いた色鮮やかな絵が壁一面に描かれています。「ジングルベル」や「ホーリーナイト」の音楽が流れているのです。さながら日本の年末のデパートやスーパーマーケットの中国版といった感じです。今日、わが家のポストには、いくつかのスーパーのチラシが入っていました。

 このモールの前は、片側3車線の道路があって、そこから右に入った道路から、もう一本野道に入った所に、私たちの住んでいるアパートがあります。歩いて7~8分の所に、ハーモニカと言うよりは、〈もろこしの豆〉のように縦横に、小さな店が出店している「菜市場」という区域があります。中国中の街に無数にあるのですが、野菜、果物、雑貨、乾物、肉などが売られていて、大賑わいです。私が中学の頃に、よく出かけた御徒町の「アメ横」のような雰囲気で、雑多に並んで商売をしているのです。やっと冬になったからでしょうか、土日には、この「菜市場」に行く通り沿いに、簡易テントがところ狭しと張られて、「冬物の衣料」が売られています。ものすごい人盛りで、近づけない感じがしてしまいます。

 物の豊かさは、年々増え続けているのを感じます。地味な色が主流でしたが、色彩も豊かになってきて、7年前の中国の街の様子とは雲泥の差を感じてしまいます。それでも昨日、私たちがお会いした方は、四川省の出身で、いわゆる「農民工」と呼ばれ、毎日10時間働いておられるのだそうです。日曜日が定休日なのでしょうか、普段は掃除婦として病院の床掃除をなさっておられ、小ざっぱりした身なりで、毎週やって来られるのです。昔の日本のように、低賃金で働いておられるようで、これから、こういった労働に従事される方の生活も、きっと向上していくのではないかと思ったりしていました。

 とにかく、こちらの方は、よく働かれるのです。日本人が勤勉だと言われていたのは、昔のことで、今では、こちらの方に、そのタイトルを奪われてしまったのではないでしょうか。くよくよしないのです。さすが冬場にはみられませんが、夏には、道路の脇の木陰のコンクリートの上で、大の字になって仮眠しているように、おおらかなのです。生命力が旺盛で、首をうなだれているような方は、ほとんどいません。どんな身なりをしていても、胸をはって、堂々と歩いている姿は、小気味がいいものです。男性も女性も同じです。そんな華南の巷(ちまた)の歳末の様子です。

 それに引きかえ、日本に帰って街で見かける青年たちが、背を丸めて、うつむき加減に歩いているのとは対称的です。『胸を張って歩け!』と、喉まで出かけるのですが、なかなか言い出せないもどかしさを、いつも感じるのです。寒波襲来で、太平洋側の街でも雪が降ってると、ネットニュースが伝えていました。師ならずも、追われて走りだしている日本の街中の様子が、瞼に浮かんでまいります。

(写真は、「茉莉花」です)