母の詩四題

.

.

 これって、《敬慕》の念があふれていて、「敬母の詩」なのでしょう。和歌山県で生まれた詩人の河野進牧師の「母の詩」です。「明治の母」に育てられた方で、懐かしい思い出があふれていたことでしょう。慢性の喘息で、苦しんでいたお母さんに向けられる、優しい息子の思いの深さが読み取れるようです。

 

❤️「母 讃歌」

富士山と母は よく似ている

うれしくて なつかしく

大地にしっかり立って どこへも動かないで

嵐にも暗い雲にも 負けないで

昼も夜も むくいは ついに求めないで

富士山になくて 母にあふれる

太陽のような あたたかさ ほほえみ

永遠につづくのは 神と母の愛であろう

 

❤️「太陽のように」

母という字は

上から 下から

左から 右から

表から 裏から 見ても

同じかっこうをしている

母は太陽のように

かげひなたがないもんな

 

❤️「同情」

お母さんのようなやさしい人が

どうして生涯 病気をされたか

よくわかりません

病気をしたから やさしくなったと

思いません

でもわたしが多くの病人に同情できるのは

たしかにおかあさんのおかげです

すみませんが ありがとうございます

 

❤️「巻きずし」

保育園のこどもたちに

すしやでつくらせた巻きずしを持たせて

裏の桃山へ花見に行った

ゆうこちゃんは二切れのこした

どうしたの

お母ちゃんとおにいちゃんにあげる

わたしのこどものころの思い出が

いなづまのようにひらめいた

 

♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡

 この牧師さんから、愛情と敬意のこもったお便りを、二十数年前にいただきました。主と教会、そして人を、とくに弱い立場の人に関心を向け、愛して奉仕された牧師さんでした。

.