今頃の季節で、一番有名な俳句は、山口素堂が読んだものです。宝暦六年(1678年)に、甲斐国の出身で、江戸に住んでいた山口素堂が詠みました。
江戸っ子は、江戸湾で水揚げされた、一匹「ニ両三分」もした「初鰹」を口にするのを「粋」としたのだそうです。ですから女房を質草にしてでも食べたいほどだったそうです。時期をずらして食べれば、安くてすむのに、江戸っ子って面倒な人たちだったのでしょう。
下の息子が、高知に出掛けて、帰って来た時に、「鰹のたたき」を土産にしてくれたことがありました。江戸っ子ではないのに、ほんとうに美味しかったのです。この高知では、「一本釣り」で漁をするそうで、その映像を見たことがあります。
今では、一年中、スーパーの魚売り場に、「鰹のたたき」が並んでいて、「春の旬」を味わう喜びがなくなって、江戸っ子には気の毒です。五十年前の新婚旅行で、『結婚生活が調子良く送れるように!』願って、千葉県の「銚子(ちょうし)」に行きました。
そこの漁港で、鰹を三本買って、かついで帰って来て、家族に配ったのです。一番驚いたのが、女房殿でした。夢見た結婚、浪漫チックな新婚生活の始まりが、「鰹」だったわけです。でも、義母がさばいてくれた、あの鰹は美味しかったのです。
それででしょうか、女房殿は、庶民派の鰹が好きではなく、鮪派なのです。おろし生姜醤油で、今夕は食べてみたいものです。
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