先週、東京に「初雪」があったと聞きました。朝起きて、カーテンを引いて、曇りガラスを開けると、一面が雪景色でした。寝間着のまま、下駄を履いて庭に出て、降った雪を手ですくい、その冷たい感触を楽しんで喜んだ日々がありました。明け方の薄く積もった雪に、下駄の二の字二の字を、嬉々として踏んでいくのは、楽しかったのを思い出します。
初雪や二の字二の字の下駄の跡 田捨女
今日日、子どもたちは、初雪を喜ぶよりも、登校のことを考えて、心配を、先に感じてしまうのでしょうか。大人のように考えて、明治の子、大正の子、昭和の子のように喜ばないのだそうです。『雪だるまを作ろう!』、『雪合戦ができるぞ!』、『橇で坂道を滑ろう!』とか、あの頃の子どもたちは思ったのです。今年の冬は、日本海側では、雪を楽しむなどと言えないほどの積雪量があるそうです。雪かき、雪下ろしなどで大変なことでしょう。
みんなゆめ雪割草が咲いたのね 三橋鷹女
花の中に、「雪割草」とか「初雪起こし」という名を持ったものがあります。こう言った名がつけられる趣きや情緒が、漢字文化のなんとも言えないよさではないでしょうか。ヨーロッパでは、雪割草を「ヘパチカノビリス」、初雪起こしを「クリスマスローズ」と呼ぶのだそうです。これにも、それぞれの思い入れがあるのでしょう。でも、本当に雪を割ったり、初雪を起こしたりして咲き始める花々に、そう命名した生活感や詩心には驚かされます。「雪割草」は、中国語でも同じ漢字で表記しています。
「初雪起こし」は、日本では<一月に花>とありますから、来春、年が改まってから咲くことでしょう。一度、その咲き始める姿を見たいものです。
(写真は「初雪起こし」です)