子どもの頃、今頃になると、普段と違って、人が慌ただしく急ぎ足で歩いていたり、店でも、普段店頭に置かない物が売られ、店主の呼び込みの声が一段と高くなっていたのです(まだ「X’mas」が騒がれる前のこと)。そして歌い始める「歌」がありました。滝廉太郎の作曲で、文部省唱歌の「お正月」です。
もういくつ寝ると お正月
お正月には凧あげて
独楽を回して遊びましょう
早く来い来い お正月
もういくつ寝ると お正月
お正月には毬ついて
追羽根ついて遊びましょう
早く来い来い お正月
「正月」が、一年の節目の時であり、『新しい気持ちで迎えたい!』との思いが強かったのです。「お年玉」が貰えるし、普段食べない「おせち料理」も食べられました。母は年の瀬になると、障子を張り替えたり、正月料理の食材を買いに行き、料理をしていました。醤油が足りなくて、空き瓶を持っては、買いに行かされたこともありました。父は、「お雑煮」の餅を、米屋さんに注文し、規格通りに切っては「もち箱」に収めていました。
正月に関わる物や事には、「お」が付けられ呼ばれて、<大事>にされていたのです。兄たちと凧揚げや駒回しをしたり、双六(すごろく)やカルタ取りなどをやったことがありました。目や鼻や眉毛や口などの顔の部分を、目隠しで置いていく「おたふく(福笑い)」という遊びもしたでしょうか。
ここ中国でも同じで、「春節」を、そのような気分で迎えるのです。「春節」は、旧暦(農暦)で行われますので、日本とは時期のズレがあります。来年は、2月19日が、「元旦」で、「元宵節(日本の<小正月>」は、3月6日です。「節目」を大切にし、待望の「春」を喜び迎えるのです。都市化が進み、西欧の生活様式が入ってきても、昔ながらに喜び迎えるお気持ちは、まだまだ強いものがあるようです。
子どもの頃に感じた、あの独特な高揚感、待望感が懐かしくて仕方がありません。『お醤油買ってきて!』の母の声が聞こえてきそうです。
(イラストは”yahoo”の「呼び込み風景」です)