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「四季の歌」の二番に、次にようにあります。

夏を愛する人は 心強き人
岩をくだく波のような ぼくの父親

<父のような夏>だと言うのです。つまり男性的な季節だと言うのでしょうか。ギラギラと陽が照りつけ、陽炎(かげろう)が燃え、雷光や雷鳴、そして土砂降りの夕立があり、甲高いアブラゼミの鳴き声があたりを圧倒し、西瓜やトマトの美味しい季節でもあります。よく川に泳ぎに行き,帰りに<ボンボン>と言う氷菓を買い食いし,兄や近所の遊び仲間と,家に帰った記憶があります。

今の子どもたちと違って,夏休みの宿題も少なかったし,し忘れて新学期に登校しても、それほど怒られなかったのです。どの学年でも、担任、隣りの担任にさえも叱られてばかりでしたから、記憶が薄いのかも知れません。自動車も少なかったし,生活がのんびりし,生活圏も狭かった時代でした。追いかけられたり、強いられたりすることのほとんどない、自分の歩調で生きられた時代だったのです。蛍は,山の中に行かなくても、家の前の小川で捕まえられましたし,蚊帳の中に放って,点滅するのを眺めてる内に眠りに落ちたのです。

夏が好きな私でしたが、ただ一つ嫌いだったのは、必ず蚊に刺されることでした。周りにいる人は刺されないのに、必ず自分は何箇所も刺されるのです。それはどの夏も例外なく繰り返されたことでした。ですから、こちらに来てからも、蚊帳を張って寝ないわけにはいきません。それで今年も早々と、戸棚から蚊帳を出して張ったのです。しかし出入りが下手なもですから、蚊帳の中に蚊を招き入れてしまい、安全圏なのに刺されてしまうのです。

ところが、今年は特別で、「異変」が起きているのです。どうしたことか、蚊に刺される回数が、これまで三回ほどしかないのです。代々木公園の近くで、蚊に刺されてデング熱に感染される方が多いそうですし、こちらでも広東省の広州でも多発してるようですから、蚊の発生は多そうです。私の住む街では、暑すぎて蚊の発生が少ないのか、蚊に好まれる自分の体質が変わったのか、不思議でなりません。狐につままれているような感じの秋口の週初めです。

(浮世絵は、二代目広重の「 赤坂桐畑雨中夕けい」です