9月23日の「夜行バス」で大阪に行こうと思っていましたら、『お父さん。何時までも学生のような気持ちで、夜行バスなんかに乗らないでね。明日の朝一番の新幹線で大阪まで行ってね。私が電車代をだすから!』と、長女が電話をかけてきました。それで変更して、24日の朝6時、品川発の「のぞみ」に乗ることにしました。代官山から品川駅まで電車で行こうとしたら、次男が、『タクシーがいいよ!』と言ってくれましたので、これまた従うことにしたのです。〈貧乏性〉というのは直らないものですね。安い方がいいと思うし、安全とか疲労とかを考えない私を、子供たちは、このように心配するのです。
駒沢通りと新駒沢通りの分岐点あたりでタクシーを拾いました。荷物をしょって、自転車で付いてきてくれた次男と握手をして別れて、タクシーに乗り込みました。『どちらへ?』というので、『品川駅までお願いします!』と答えました。『品川駅で新幹線に乗るのなら、そこに近い港南口の改札口の方がいいでしょう!』とのことでで、『お願いします!』と答えたのです。いろいろと聞いてきた話の中で、『これまでは飛行機で日本と中国を往復したのですが、今回は、船を利用しましたので、帰りも大阪港から上海行の船に乗るのです!』と言いましたら、『ご旅行ですか?』というので、『学校で日本語を教えているので、新学期に間に合うように帰るのです。もう在華七年目に入ります!』と言いましたら、感心して聞いておられました。
そんな話をしていましたら、『メーターを止めます!』というのです。『実は道を間違えて、こちらの遠回りの道に来てしまったのです。もう5分ほどで品川駅に着きますが、料金は、このメーターで結構です!』というのです。今まで、遠回りされたことがありますが、こんなことをした運転手はいませんでした。故意に間違えたのではないのですが、品川周辺の道路など全く知らない私ですから、そのまま走っても問題はなかったのですが、そこまで気を回してくれたのには驚かされたのです。それで、『そうですか・・・』と言って承知したのです。下車するときには、『お気をつけて!』と、旅の無事の言葉を添えてくれました。
私は勘ぐることもできましたが、こういった誠実で、正直さをあらわす運転手がいることに驚いたのです。昔から、「雲助」と言って、粗暴で料金を多くとる運転手が多いのに、東京を離れる日の朝に、こんな経験をして、実にすがすがしい思いで、「のぞみ」に乗り込んだのです。そういえば、天津にいたときに、習いたての標準語で、運転手と話をしていたら、何を思ったのか下車のときに、『タクシー代は要らない!』と言ってくれたのです。『いや払う!』と言いながら、この運転手の行為を喜んで受けて、『謝謝!』と言って降りたことがありました。家内が乗っていて、ちょうど長女が来ていて、一緒だったと思います。
6000円の高速バス代は無駄になってしまったのですが、それにはかえられない思いにされたことに感謝を覚えたことでした。日本でも中国でも、いろいろな出会いがあります。今回、こんないい気分で戻ってきたとき、家内に、この話の顛末を語ったら、彼女も感心して聞いていました。世界中、いい人が多いのですから、明るく生きて生きたいものです。