[旅に行く] 芭蕉の感性の凄さ

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 荒海や 佐渡に横たう 天の川

 芭蕉の作です。越後国の出雲崎の浜に立って、天空と海の彼方にとに目をやっています。海の向こうに「佐渡」を見て、見上げると、高遠な「天の川」が視界に入ったのでしょう。

 古人も、天空の不思議に心躍らせたのです。江戸時代、工場の煙突はなく、竈(かまど)や焚き火の煙が立つくらいで、空は澄み渡って綺麗だったに違いありません。夜空を散りばめる星々を眺めている芭蕉の感性には驚かされます。齢四十六の芭蕉は、現実ばかりを見る人ではなく、大自然に目を向けて感動しているのです。

 伊賀国上野に、寛永二十一年に生まれ、俳句を学ぶのですが、二十七歳の時に、江戸に出て行きます。俳人として生きていく芭蕉は、多くの弟子を持ち、彼らに慕われた人でした。

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 「旅を栖(すみか)とす」、李白のように「漂白の思いに駆られ」、「三里に灸すゆる」によって、陸奥(みちのく)に向かって、「過客」となって、深川の庵を出立するのです。芭蕉が使った「ことば」が素敵ですね。李白や杜甫の詩作に学んで、豊かな語彙を蓄えた人だったわけです。

 この人は旅好きだったのです。「奥の細道」の紀行を終えた後に、「野ざらし紀行」を著すのですが、江戸に帰って、また旅に出ています。ゆっくりとした時を過ごしていて、その好きな旅(お弟子さんを訪問の時です)の途上で、享年五十で亡くなっています。

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