秋桜

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「庭のコスモス」と言いたいのですが、わが家では、「窓際のコスモス」で、枝が曲がって咲いたのもあり、応急手当ての様にビニール紐で倒れなくして、そのままで、見栄えが悪いままなのです。その身丈が、もう私よりも高くなってしまいました。風が吹くたびに揺れていますが、互いにぶつかり合ったりしないで、山でもある様に、屹立(きつりつ)し、孤高の花の様に咲き続けてくれました。

時々、わが家を訪ねてくる5才になったお嬢さんが好きで、家内に、『百合さん、コスモス欲しいの!』と言うので、家内はハサミを持って外に出て、花を摘んで、切り口に濡れたティッシュを巻いて、何度か渡してきました。風邪を引いたと聞いて、お父さんに持たせたこともありました。

見て分かる様に、花びらが整然とバランスよく並んで咲いているのです。それだからでしょうか、ギリシャ語の「調和」、「秩序」、「宇宙」と言う意味を持った「コスモス(κόσμος, kósmos)」が語源で、命名されたのでしょう。

中米メキシコからヨーロッパに持ち帰って、瞬く間に世界中で、タネが蒔かれ、植えられてきています。わが国には、明治の初年にやってきて以来、全国に拡散し、令和元年、栃木のわが家の軒下の長方形の鉢に、家内が発芽させた種を植えて、美しく咲き始めたのです。

「コスモス」には、《世》と言う意味もあるのです。海も、湖も、人の住む所も、悪や不正や不条理なことが起こるこの地上も、人の思惑だけが横行し、自然の猛威が荒ぶる世界も含むのでしょう。この反対語は、「カオス(Χάος, Chaos)」で、「混沌」、「無秩序」の意味を持ち、支離滅裂の状況を言います。現代の「人の世」は、悲しいかな、まさに「カオス」状態ではないでしょうか。
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そんな現代に向かって、「秋桜」は、整然と花びらをつけて、天に向かって屹立しながら咲いています。きっと、『秩序あれ!」とか『調和あれ!』と言いたいのかも知れません。
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