返り咲き

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生まれた年も、74年前も、東京オリンピックが行われた年も、結婚した年も、4人の子たちが生まれた年も、東日本大震災の日も、熊本大分大地震の年も、同じ様に、日本の津々浦々、都会でも田舎でも、この「朝顔」が咲いていたのです。そして今、北関東の「小江戸」の街の片隅でも咲いています。

「朝顔」は、戦争を語りません。自然災害にクレームをつけません。ただ咲く使命を託された花で、人を慰め、励ましてきているだけです。早朝、ベッドから起き上がって、障子を開けて、まず家内の目に飛び込んでくるのは、花開いた「朝顔」です。

華南の町で、狭いベランダに「朝顔」の発芽した芽を、土の中に植えて、何年も、晩春から、年明けの正月まで、その鑑賞を楽しんできました。遣唐使が帰国時に持ち帰った「朝顔」が、咲き終わって残した種を、それが幾年も繰り返されて、平成の代に、その種を、任地に戻る荷に忍ばせて持っていった種を、小さな鉢の土の中に植えたのです。それは見事な《返り咲き》でした。

今も同じ様に、静かに花開かせた「朝顔」に、生きている実感を覚えさせられいるのです。
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