「今年の漢字」に選ばれたのが、「輪」だと報じらていました。「解字」で調べて見ますと、偏が「車」で、旁が「侖」になります。「車」は、二つの「くるま」が、何かを載せたり、腰を下ろしたりする部分の「田」の軸を挟んで対峙しています。「侖」は、「册」が順序よくならんだ様子を表しているようです。漢字を作った人が、どのように発想して作字したかは、推測するしかありませんが、漢字学者の白川静は、そのように論じています。
古来、人々は、一所に集まって、村落の必要などを話し合ったり、また、収穫を終えた喜びを、輪のようになって、語り合ったり、踊ったりしてきたのでしょう。「車座になる」のと似ています。私たちの国には、漢字が渡来する以前から、「わ」という言葉があったあったのです。漢字がやってきた時に、「和」、「倭」、「輪」というように表記したわけです。きっと「わ」という言葉は、それぞれに関係があったのかも知れません。これも、素人の推測なのですが。
今年は、2020年に開催されるオリンピックの開催国として、日本が選ばれた年ですから、「五輪」の「輪」に因んでの漢字の選考の理由の一つだったそうです。「輪」の入った言葉に、「内輪」があります。揉めたりしては困りますが、家族内、友人内、会社内など、親しい関係にある人たちの和やかな交わりのことをいうのでしょうか。「輪っか」の中に収められている状態なのでしょう。
この十年ほど、交通事故で亡くなる方が少なくなってきているのに驚きます。1万5千人もの方が事故死していたのに、年々減少傾向にあることは、喜ばしいことです。この交通事故のことを、「輪禍」と言っていますが、車の車輪のことを言うわけです。その他に「輪」のつく字には、「輪廻」、「輪番」、「輪郭」、「輪舞」などがあります。これらは、「輪」が軸の周りを回るように、丸くなって外縁を描く様子を表しています。そう言えば、市内の古い街並みを観光開発した地域に、人力車が走る光景を目にしたことがあります。ハッピは着ていませんが、車夫が観光客を乗せて、石畳の上を二輪の輪っかを回しながら走っていました。
今年は、「車軸を流すような豪雨」が、世界中でありましたが、過去の面倒なわだかまりや因縁などが流れてしまうのは歓迎ですが、人を怯えさせるような豪雨は遠慮したいものです。来年は、あのような被害のないことを願う十二月も中旬、『もう幾つ寝るとお正月・・・』と数えられほどの日数になって参りました。好い年の暮れでありますように!
(写真は、トヨタ博物館の「人力車」です)