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先日、日本の桜の開花時期に、学生のみなさんに「国花」に関する作文を書いてもらいました。日本では、春の「桜」、秋の「菊」が「国花」に指定されていますが、中国の「国花」は「牡丹」だと思っていました。ところが、この「牡丹」と「梅」とが、「国花」の候補に上げられていて、実際には、まだ決められていません。中国の北部では「牡丹」が、南部では「梅」が好まれているようで、みなさんの意見も二分されていました。「清」や「中華民国」の時代には、「牡丹」が国花に指定されていたようですが。「梅」は、日本人にとって、桜に先駆けて咲き出しますから、感じることが多いようです。
街中を歩いていますと、あちらこちらでブーゲンビリアが咲き、ハイビスカスが一輪二輪と咲き始めています。「春酣(はるたけなわ)」とは、こういった風情なのでしょうか。ブーゲンビリアは、日本では鉢の中に植えられていて、花屋さんで売っていましたので、一鉢買ってベランダにおいていたことがあります。しかし、こちらでは生垣でしょうか、植え込みでしょうか、あちこちに咲き乱れているといった感じです。色づいて様々な色の花に見えるのは、実は葉であって、「花」は葉の中央に白い物であるようです。こちらでは、「九重葛」、「三角梅」、「叶子花」とか言っているようです。日本では、「筏葛(イカダカズラ)」と呼ばれますが、原産はブラジルだそうです。やはり、ギラギラする南国の陽の光に咲く、南国の花ですから、見事なものです。
天津にいました時に、白い「わたげ」のようなものが、街中に飛んで、幻想的な光景を見せていたことがありました。ちょうど今頃の季節だったと思います。タンポポが咲き終わった後に飛遊するような光景に似ていますが、規模が違って、街いっぱいにあふれるといった感じでしょうか。こちらでは「柳絮(りゅうじょliuxu))」と言い、北京や天津など東北地方の風物詩なのです。まるで雪が降っているようように感じられ、吹き溜まりには、真っ白なワタの球のようなものがあちこちに見られました。
日本では見たことのない光景に、しばらく足を止めて、柳絮の飛んでいる様子を、目で追い続けていたことがありました。「春節」が暦の上での春の到来を告げるのですが、本物の春の到来を告げるのは、天津では「柳絮」なのでしょうか。中国に、「柳絮之才」という諺があります。普の謝安が、『雪は何に似ていますか?』と聞いたところ、姪の謝道韫(XieDaoyun)が、『未若柳絮因風起』と答えたのです。女性の才が長けていること、「非凡な女性」のことを、そういうのだそうです。太田道灌に、「山吹」の一枝を手向けた少女の話に似ていますね。
自然界は毎年毎年、心変わりすることも、躊躇することもなく、きちんと訪れてくれます。春を造られ、春の風物詩を楽しませてくださる造物主に、心から感謝しております。明日からは、「早苗月(さなえづき)」が短くなって、「皐月(さつき)」と呼ばれてきた五月です。「田植え」の時期なのですね。雨の中に、かっぱを着ながら、田植えの手伝いをしたことがありました。
〈写真は、”写真集手賀沼”から、柳の木の「柳絮」です)
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