好み

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「にぎり寿司」

 『犬を連れ、桜を愛(め)でて、寿司を食う!』、日本人の好きなものを調査した、NHKの「放送文化研究所」の榊原一所長は、日本人を端的に、そう表現しています。2007年3月に行われた調査の結果は、現代の日本人の特徴を捉えているようです。動物では「犬」、木や花では「桜」、食べ物では「寿司」という答えは、男女差と年齢差のない、おしなべて日本人の総体的な好みなのです。

 そう言えば、『何か食べよう!』と思うとき、無難な選択は、「寿司」のようです。近くの商業施設(モールのほうがいいでしょうか)の中に、二軒も「回転寿司」が開店営業していますから、大通りを渡って越えて行くなら、ものの5分ほどで行ける範囲で、少々味が本場とは違っていても、食べたあとの満足感は、殊の外であります。たまの外食には、ここに足が向くというのは、私が一般的日本人であるということになるでしょうか。動物には、「ネコ派」と「イヌ派」があるのだそうです。父の家では、「犬」を飼っていて、猫は飼ったことがありませんでした。「泥棒猫」のイメージが強いのと、生臭い肉食なので好きではなかったのです。ところが、娘の飼っていた猫の世話を頼まれて預かり、アメリカに引き上げるので飼えなくなった猫を引き取ることになって、飼い始めたのです。しかも二匹でした。飼っているうちに情が移ってきて、可愛くなっていくのには驚かされました。

 一匹は黒猫のオスで、去勢手術をしていたのです。仲間から異端猫扱いをされて、仲間になれない孤独な猫を生きているうちに、同情も湧いてきたのです。結局、私たちが日本を離れることになって、市の愛護センターに連れていってしまったのです。一番の犠牲は、そのタッカーとスティービーでした。可哀想なことをしてしまい、悲しい思い出であります。「桜」は、いうまでもありません。次男が、目黒川の近くに住み始めて、ここを知ってからは、どの名所よりも贔屓の観桜スポットになってしまいました。

「卤面」

 そして、日本人の好きな音楽家は、「モーツアルト」でした。これも私の好みですから、極々私が日本人であることになるのでしょう。好きなデザートが、アイスクリームで、八ヶ岳の「清泉寮」のソフトアイスクリームを贔屓にしたのも、一般的日本人の嗜好であったわけです。この日本人という垣を超えていない自分であることを認め、よく7年も生まれた国を離れて生活をしてきたものだと、感心してしまうほどです。家内と、ちょくちょく行く店は、「卤面lumian」の専門店で、これが好物になってしまいました。「卤」というのは、片栗粉のことで、ドロドロしたつゆの麺類なのです。肉と小さな牡蠣と何種類かの野菜、キノコ、そして、もう2元出すとエビが二匹つくものなのです。先日、メニューが新しくなって、最低価格が8元になっていました。こちらに来た当初は、3元か4元だったのですから、物価の高騰は庶民の味にも及んでいるのです。店によって味が、相当違うので、行きつけは、私たちのアパートの中の大通りに面したところにある店です。

 師大で日本語を教えておられた先生が、『日本のラーメンに似た味ですよ!』と紹介していただいて食べ始めてから、病みつきになってしまったわけです。この方は、今は帰国されてしまわれたのですが、何度も一緒に食事をして交わりを持った方でした。同じ大学の少し後輩の方でした。そして、好きな漢字は「心」、好きなことばは「ありがとう」という調査結果でした。犬を連れ、桜を愛でて、寿司を食べて、『ありがとう!』と感謝して、「心」を満たすなら、日本人を生きていることになりますね。

(写真上は、江戸前の「寿司」、下は、「卤面」です)

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