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 サッカーは、FW(forward、フォワード)5人とDF(defence、デフェンス)5人とGK(goalkeeper、ゴールキーパー)1人の11人制の球技です。やはり花形は、攻撃陣のFWであって、得点ゴールを上げるのです。テレビのカメラは、90%は攻撃選手に向けられ、その攻撃を防御するデフェンスは、刺身のツマのように、脚光をあびることは極めて少ないのです。もちろん、近年はデフェンスに優れた選手がいて、果敢に攻撃してくる相手方を、巧みにかわす花形選手も出てきています。それでも、何時でも騒がれるのは、フォワード選手なのです。

 私は、鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、京都サンガで活躍し、今は現役を退いた秋田豊のプレイが好きでした。その他にも、ヴィッセル神戸、宮本恒靖のフアンなのです。彼らはDFの名選手でした。サッカーは、守りがあっての攻撃だと信じておりますので、デフェンスの目立たない地味なボールさばき、球出しが攻撃につながるのですから、実に重要なチームの要であるのです。私は、11人制のハンドボールの最後の世代の選手でした。サッカーと同じコートですが、35メートルラインというのがあって、攻撃と守備を6人で行うのです。攻撃陣にデフェンスから一人、守備陣にフォワードから一人が加わって、結局は7人制の競技だったわけです。私たちの時代以降、ハンドボールは〈7人制〉に移行して、バスケットボールと同じ程のコートになりました。サッカーは、DFも攻撃して得点を上げる機会がよくありますが、11人制のハンドボールには、そういった機会は極めて稀だったのです。私はFWをさせていただき、9番を着せていただいてセンターフォワードをしました。ところが私たちの時には、東京都2位で、国体もインターハイも出場することがかないませんでした。大学の運動部に推薦入学をされたのですが、行かず仕舞いでした。走って走って走った高校時代でしたから。

 8月2日、元日本代表で、〈横浜マリノス〉で活躍し、今シーズン、〈松本山雅〉に移籍した松田直樹選手が、練習中に、心筋梗塞を起こし、4日、信州大学・高度医療センターで亡くなれました。34歳でした。私の子どもたちと同世代ですから、亡くなられたニュースを聞いて、驚かされました。秋田豊が41歳、宮本恒靖が34歳ですから、彼らと共に戦った名選手だったのです。それでも、秋田、宮本の陰に隠れたDFでしたが、サッカーフアンにとっては、とても人気のあった選手でした。松田選手の亡くなった後の、フアンの悲しみの大きさや深さが尋常でないことを知って、それにも驚かされました。現役選手の練習中の死亡事故というのが、長年支えてきたフアンには、大きなショックなのでしょうけど、やはり、彼の人柄なのではないでしょうか。

 聞くところによると、怪我などで欠場する同チームの選手の名前を、ユニフォームの下の下着に書きこんで、『お前も一緒に戦っているんだぞ!』とのメッセージを送っていたのだそうです。浪花節の心根が、人を感動させるのでしょうね。グラウンド上の勇姿と、家庭人の彼とにはギャップがあった破天荒な人生だったとも聞いております。わけ合って別れた奥様がおいでです。3人のお子さまの、悲しみを超えて、健やかな成長を心から願っております。惜しい選手を亡くしてしまいました。

(写真は、横浜マリノスの欠番となった、松井田直樹の「3番」ユニフォームです)