華南在住の折、アパート群の中に住んでいて、向かい側の南向きの棟のベランダは、わが家の北側のベランダの窓越しに見えます。そこには洗濯物が満艦飾のように干されてあるのです。大きなシーツが、下の家の半分ぐらいを塞ぐようにして干してある家が何軒もあり、我が家の目の前にも、時々、それがありました。「わが王道を行く〉、なのでしょう。
驚いたのが、ご婦人の下着の干し方なのです。日本では、ring の物干しに、周りに手拭いなどで目隠しをして、内側に干されてあったりしますが、あちらでは、ベランダの真横に、堂々の内衣、しかも真紅なものが干されているのです。大体、どこででも同じような干し方で、『あれって何なんだろう?』と思って、ある方に聞いたことがありましたが、答えてもらいませんでした。
冬になると、とくに今頃の「春節」を迎える頃になると、真紅の上下揃いのシャツとタイツのようなものが、箱に入れられて山のように積まれて、多くの店で売られているのです。men’sも ladies’ もです。縁起担ぎや魔除けなのでしょうか、確かに「紅」は健康色なのでしょう。
一度、買おうと思いましたが、躊躇して、手を引っ込めてしまいました。温泉好きの私は、帰国して銭湯に行っても、入浴施設に行っても、真っ赤な下着を脱ぐ姿を想像しただけでも、好奇の目に晒されてしまいそうで、できないなあでした。そんなこと構わないではいられない日本人の窮屈さなのでしょうか。
見ようとして、見たのではないのですが、隣家のご婦人が、わが家の物干しの真横に、それを干していて、洗濯当番の男の私は、どこに目をやっていいのか困ることしばしばでした。日本人は、〈恥じらい〉を美徳のように思うのでしょうか、大陸の女性は、おおらかなのかも知れません。文化や習慣なでしょうか、〈紅旗〉を掲げる国情もあって、中国のみなさんにとっては、独特の意味合いがある色彩なのです。
今住んでいる家の南側に、駐車場を隔てて、立派な二階建ての家があります。子育てが終わったて、孫を持つ身のわれわれ世代のご夫婦が住んでおられます。もう亡くなったのですが、飼っていた犬の散歩中に見かけた家内と、話が始まって以来、交流が始まったのです。旅行のお土産や頂き物のやり取りをしたりする仲です。先日の上京中、『洗濯物が、一週間も干されていなかったので、どうしたのかなと思っていました!』と、路上で会って言ってたそうです。こちらは、『ご主人の車が、朝早く動かないので、どうしかたな?』と思っていたとのやりとりで、双方が〈見守り》をし合っているのです。
(住んでいたアパートの七回から向こうの棟を撮った写真ものです)
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