たいせつなこと

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スプーンはたべるときにつかうもの 

てでにぎれて くちのなかにあうんとおさまり たいらじゃなくくぼんでいて ちいさなシャベルみたいに いろいろなものをすくいとる でも スプーンにとって たいせつなのは それをつかうと じょうずにたべられる ということ

ひなぎくはしろい 

まんなかがきいろく ながくてしろい はなびらには はちがちょこんとすわり なんだかくすぐったいかおりがして ひろいみどりのそうげんに よりそいささやきあっている でも ひなぎくにとってたいせつなのは しろくあること

あめはうるおす 

あめはそらからおちてきて しとしとざぱざぱとおとがして いろんなものをつやつやにかがやかせ どんなあじにもにてなくて くうきとおんなじいろをしている でも あめにとって たいせつなのは みずみずしくうるおす ということ

くさはみどり

くさはおおきくのびて あまくあおいにおいで やさしくつつみこんでくれる でも くさにとってたいせつなのは かがやくみどりであること

ゆきはしろい

ゆきはつめたくかるく ふんわりそらからおりてきて まぶしくちいさなほしやすいしょうのように きらめいている ゆきはつんとつめたい ゆきはそっととけていく でも ゆきにとってたいせつなのは いつもかわらずしろいということ

りんごはまるい

りんごはあかい したくのできたりんごは きからぽたんとおちてくる かじるとなかはしろく あまずっぱいつゆがほおにはじける そしてりんごのあじがくちいっぱいにひろがる でも りんごにとってたいせつなのは たっぷりまるいということ

かぜはふく

かぜはめにみえないけど ほおでかんじることができて こずえをゆらし ぼうしをふきとばして ふねをはこんでいく でも かぜじとってたいせつなのは ふくということ

そらはいつもそこにある

まぎれもなくあおくて たかくてくうきにみちている そしてときおりくもがとおりすぎていく でも そらにとってたいせつなのは いつもそこにあるということ

くつはあしをつつむもの

あるくときにはいたくつは よるにはぬいでしまい ぬいだくつには ほんのりぬくもりがのこっている でも くつにとってたいせつなのは あしをつつんでくれること

あなたはあなた

あかちゃんだったあなたは からだとこころをふくらませ ちいさないちにんまえになりました そしてさらに あらゆることをあじわって おおきなおとこのひとやおんなのひとになるでしょう でも あなたにとってたいせつなのは あなたがあなたであること

 

【出典】マーガレット・ワイズ・ブラウン作、レナード・ワイスガード絵、うちだややこ訳、フレーベル社2001年初刊

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